AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

早川 遥菜
19年度編集長
早川 遥菜

ハンバーグが大好きと公言していますが、 「母の作る」ハンバーグが大好きなのです。 気持ちに素直な人であり続けるために、 今日も沢山の物語に出会います。

2018.08.01

「見る町、買う町、食べる町」浅草を知り尽くす、光良さんとの旅

和えて special

■順調な旅のはじまり

3回目の旅するトーク。今回の旅するトーク会場が「浅草」と聞いて、私は今までで一番安心していた。1回目の銀座一丁目はもちろん、2回目の新橋も、私にとっては縁もゆかりもなければ、むしろ初めて行ったといえる場所だった。しかし浅草は東京を代表する有名な観光地。田舎育ちの私にとっても、浅草は修学旅行の行き先だったし、上京してからも実は何度か遊びに来たことがある。そのため今回は迷子になることはないと確信していた。

浅草に到着。雷門の前には、大勢の観光客が記念撮影をしていた。私も修学旅行の時はここで写真を撮ったっけなあ…そんなことを考えながら、雷門をくぐる。

夜の仲見世は、既にところどころシャッターが閉まっているのだけれど、そのシャッターに描かれた浅草の風物詩にこそ魅せられてしまう。あるお店ではラムネの中のビー玉がコトン、と下に落ちる音がしたり、またあるお店では外国人の子どもたちが目をキラキラさせてお店に駆け込んでいく姿を見たり。仲見世は見る場所がたくさんあって、なんだか自分も少し落ち着きがないみたいだ。

■「もう一回来たい」と思わせる浅草にしたい

今回お話をしてくださったのは、152年もの間、浅草の街と共にお店を営んできた、日本で唯一の江戸趣味小玩具(豆おもちゃ)屋である「助六」の木村光良さん。

 

店内にはおもちゃがぎっしり。今回の旅するトークの参加者で店内は満杯。私は初め、緊張してつい遠慮がちになってしまうのだが、優しい旅仲間の方たちがレポートが書けるように、と私を木村さんの話が聞こえるところまで前に入れてくださった。

助六さんのおもちゃは専属の職人が作るため、他では買うことが出来ない。デパートで同じものを見ることはないので、浅草に来ないと助六さんのおもちゃには出会うことが出来ないのだ。初めて出会うおもちゃたちは一つ一つ丁寧に飾られていて、いまにも動き出しそう。

 

 

■「ものがたり」があるおもちゃたち

小さいのに作り方は怠らないのが助六のおもちゃ。そして一つ一つのおもちゃに物語が詰まっているのだ。例えば「笊(ざる)かぶり犬」というおもちゃ。

犬がどうして笊をかぶっているのかにも、きちんと言葉遊びの意味が詰まっている。犬の上に竹で出来た冠(笊)、これで『笑』と見立てた縁起物。見た目だけではわからないけれど、旅するトークで光良さんの話を聴くと、おもちゃに命が吹き込まれて、魅力が一層感じられる。これが旅するトークの面白さなのだ。

 

■「小粋」な日本人のこだわり

助六さんでお話を聴いた後は、「三定」さんに移動。なんと助六さんに続き、三定さんも天保8年、創業180年という老舗。

席に着いて、ここからは助六さんのお話しではなく、光良さん自身の物語も聞くことが出来た。

光良さんは、ホストの和田野さんと高校の同級生。現在は助六の6代目として22人の職人の生活を守りつつ、伝統をしっかり引き継いでいる。

日本で唯一、江戸小玩具を売っているお店であるが、もともとは幾つかお店があったという。しかし戦後、貧しくなった生活から脱却しようと次々と仲間たちが店じまい。助六も同じ環境ではあったが、「続ける」ということが大事であると判断し、現在のお店の姿があるのだ。

日本人は小さいものが好き。吉宗の時代に「贅沢禁止令」というものが出されたとき、負けん気の強い江戸っ子は「小さくても本物と変わらないくらい質が良くて楽しめるものだったら」と小さいものへのこだわりを見せるようになる。実は先ほどお話を聴いていた助六さんのお店の中には、季節様々のおもちゃが3500点も並べられていたという。一つ一つじっくり見ていたら、きっと日が暮れてしまうと思う。

浅草寺の歴史や仲見世の歴史を聴きながら天丼を待つあの時間は、とてもわくわくして、待ちきれないような、でもお話が終わってほしくないような、そんな気持ち。

 

■お話が添えられた美味しすぎる天丼

光良さんのお話のあと、ついに念願の天丼が登場。そして三定さんのお話。今日はたくさんの物語を聞けて幸せだなあ。

「三定」さんを始めたきっかけとなったのは、定吉さんという愛知県三河の人。江戸でお店を開きたいと江戸に来るが、江戸は大体の飲食店が屋台。そのため、から風による火災が後を絶たず、油を使ったてんぷら屋を開くのは難しかったという。屋台に卵を卸す「卵屋」をしながら、少しずつ技術を盗み見て人形町にお店を始めたのが「三定」さんの始まりだといいます。

そんな物語をきいたあとの天丼の姿は、とても感動的。キラキラのたれにしっかり浸かった天ぷらたちが、熱々のご飯の上に綺麗に並べられている。ひとくちかじると、じゅわーっと甘じょっぱい味が口いっぱいに広がって、こんなに美味しい天丼は初めて食べた。

「見る町、買う町、食べる町」浅草をこんな言葉で表す光良さん。今回はこの3つを全て感じることが出来た。浅草を知り尽くしている光良さんならではの旅。本当に素敵なひと時だった。また次も、浅草に来たい。そしてその時は「光良さん、こんにちは」と声をかけてみようかな。

 

■久しぶりの見た気がする東京のシンボル

帰り道、私はふと空を見上げた。夜空に混じって、視界の中にスカイツリーが見えた。そういえば、久しぶりにスカイツリーを見た気がする。

東京に住むようになってから、スカイツリーの存在価値が私の中で小さくなっていることに気がついた。東京に住む前は、高速バスの車窓から顔を乗り出して見るくらい興奮してみていたのに、今となってはスカイツリーどころか、かつては憧れの街だった東京の街を歩いていても、最近はイヤホンで耳を閉ざし、スマホをみるばかり。そんな自分の変化に気づいて、ちょっぴり寂しくなった。

 

東京の街にいつまで自分はいるのかどうかなんてわからないし、この景色がいつまで続くのなんて誰にも分らないのだから、しっかり目に焼き付けておこうと硬く心に決めて地下鉄に入る。そしてICカードにお金をチャージしようと財布を取り出そうとして、気が付く、あれ、なんで、お財布がない。

 

■財布を忘れたことに気が付いて

盗まれた、とかそんなのではなくて、単純に家に忘れてきたのに気が付くまで、それほど時間はかからなかった。さて、どうやって帰ろう。スカイツリーに答えを求めても、スカイツリーはニコニコと輝いているばかりでちっとも答えてくれない。あ、それかもしかしたら励ましてくれているのかも。

仕方なく地図を開いて家までの徒歩ルートを探すことにした。ICカードに入った残金で行けるところまで行って、あとは歩いて帰ることにする。

なかなかしんどかったが、幸いにもなんとか帰れる距離。私はイヤホンを付けないで町を眺めながら帰ることにした。

東京の夜は、明るいと思っていたけれど、それでも昼のあの騒がしさに比べたら、こんなに静かな東京はなんだか不思議。みんなが「家」という箱に収まって、また明日になれば各々が外に出てくる、そんな中わたしはひとりで箱に収まらず、この東京のしんみりした雰囲気を感じながら歩いていることの嬉しさを感じていた。

まだまだ知らない街がたくさんある。次はどんな物語と、どんな人に会えるんだろう。

早川遥菜


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