AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

副編集長
前口 祐喜子

札幌生まれ、横浜育ち。海とカメラとカフェが好き。

2021.12.25

NewMaker×Colemanーテントから生まれたドレスの物語ー(後編)

和えて special

株式会社Story&Co.は『想いの交差点』を創出する新たなプログラムを今年7月にスタートしました。
サステナブルなファッションコミュニティ「NewMake(ニューメイク)」です。大量消費・大量廃棄を余儀なくされる現代のファッション業界に一石を投じる試みとして、パートナー企業から提供して頂いた洋服や雑貨を利用し、新たな価値作りに挑んでいます。
その拠点となる「NewMake Labo(ニューメイク ラボ)」には個性溢れる作り手・NewMakerが集まり、ものづくりと向き合っています。
私たちはこのシリーズでNewMakerの1人1人にスポットを当て、そのルーツや想いを探ります。そして服を通じて大切な想いや物語のバトンを繋ぎ、新たな価値を生み出すNewMakerの魅力を発信していきます。

NewMaker×Colemanの作品を制作頂いたさんのインタビューをお送りします。
前編ではファッションを志したきっかけや作成した作品のテーマなどをお伺いしました。
後編では作品完成後の作成したフォトストーリーや今後のことについてお届けします。

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NewMaker PLOFILEーAya Kadoiー

大学卒業後、服飾専門学校に通学したのちフリーランスで活動中。
デザイン、パターン、サンプル縫製の委託や自身の作品制作を行なっている。
大学在学中はウェディングドレスの研究制作を専攻。ロンドンへの短期留学経験もある。
一方で3歳からバイオリンを始めピアノ・ビオラも学び大学までオーケストラに入団していた経験もあるため、音楽にも造詣が深い。

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◾️作品から伝わる熱量が生んだ、新たな物語

ー作品を完成させて終わりではなく、フォトストーリーも作成されていますよね。これは制作当初から頭にあったものなんでしょうか?

写真として残すことは決めていましたが、フォトストーリーを作るという所までしっかりとした構想はありませんでした。完成したドレスを見ていたら想像以上に様々なスタイリングができると思ったんです。なので1900年頃の皇女が現代にワープしてきたというストーリー設定をして、寝そべっているところから立って自由奔放に遊ぶところまでを撮ることにしました。その撮影を誰にお願いしようか考えていた時、孝山さんの写真の質感が今回の作りたいイメージとマッチしていたので、この方だ!と。面識はなかったんですけど、私自身すごく好きな「Lula JAPAN(ルラ ジャパン)」という雑誌のweb版に作品が掲載されたこともある方です。SNSはお互い見ていたんですけど、コンタクトを取ったことはありませんでした。完成したドレスを私のSNSにあげたら、孝山さんが反応してくださって。それを見て、こちらからオファーさせて頂きました。好きな雑誌や世界観が一緒だったので1度の打ち合わせで意気投合して、写真の雰囲気は孝山さんの色をそのまま出してもらい、尚且つ写真1枚1枚に物語が連想させられるような形で撮ろうという話になり、フォトストーリーを作成することになりました。

ー作成したフォトストーリーにはどんなメッセージが込められているのでしょうか?

ドレスの形が見えて来た頃に、このドレスを着て欲しいと思うモデルさんが頭に浮かんでいたんです。それがユーリさん。専門学校の時にもモデルをして頂いた方です。直接お話をしたことはなかったんですが、彼女の容姿や内側から湧き出ているオーラに何か強い物を感じていて、いつか必ず衣装を着てもらいたいと思っていました。芯のある女性だけど奔放さも併せ持っていそうだなと感じていましたが、実際にお会いしてみると穏やかで自分の観点をしっかり持っていてお茶目で。今回のドレスもそういう人物像をイメージしていたのでユーリさん以外は考えられなかったですね。ちなみに撮影当日、ユーリさんが雅楽奏者もされていることを知り、唯一無二のオーラの根源はこれだったかと、音楽の話に花を咲かせながらの楽しい撮影になりました。
今までを思い返してみると、自分自身の葛藤だったり世の中に対する疑問のようなものを作品のテーマにしてきたことが多かったと思います。この時もちょうど皇室のニュースがたくさん報道されていた時期でした。
私の作ったドレスは1900年頃のシルエット。当時の皇女は宮殿で生活していたと思いますが、今ほど自由に行動することは出来なくて窮屈だったんじゃないかなと思うんです。私だったら絶対に無理。しかし、そういう苦しい思いをしているなら逃げることも大事だと思うんです。
今の社会においても、何か思うことはあるけれど動けないという人たちに向けて、抜け出せるんだよ、もっといろいろな場所で自由に個性的に自分を表現して良いんだよ、と背中を押せるようなメッセージを送りたい。フォトストーリーを通してそういったことも届けたいと思いました。

ーフォトストーリーとして残すことで、ドレスがより魅力的なアート作品へ変化していった気がします。

外ロケで撮影を行ったんですけど、インパクトの大きい物を作ったおかげで都会の自然にとてもよく映えるフォトストーリーが完成しました。今まで自分で制作した衣装を撮影してもらって、こんなに感動したのは初めてです。出来上がった写真の幻想的な感じがすごく気に入っていて、自分でも何回も見直しちゃうくらい。
一緒に作った仲間とフォトストーリーを書籍化したいという話もしています。
そう思うくらい最高に素敵なものが出来たと思っています。

「宮殿から逃げ出してきた皇女。新しい現代世界で近未来的なドレスを身に纏い、都会の自然と触れ合う。
 宮殿での縛られた生活、解放された後の奔放さ、しかし変わらず持ち続ける芯の強さと美しさを魅せるフォトストーリー」

Model: ユーリ(@sugawarayu_ri)
Photo:孝山アキ(@aki_takayama)
Prop&direction:外園 海有(@miyu_tozono)
Design(dress,hat)&styling&direction: aYa
(@ayastyle.tky__)

◾️未来のこと

ー今回NewMekeに参加してみて、いかがでしたか?

「アートとして服を残したい」と思っていたし、サステナブルで意味のある物作りをしたかったので、私には願ったり叶ったりのコミュニティです。その上で個人として作品として残せるし、名前を知ってもらえるなんて本当に有難いことです。
それにNewMakeLaboに来ることで刺繍してる人に出会えたり、ファッション業界で経験を積んでいる人にアドバイスをもらえたり、同じ業界で繋がれる人が増えることも嬉しいです。また同じ業界の人だけではなく全く違う職種の人も多くいて、お菓子を作っているスタッフがいたり、椅子を作っている方からは素材や加工の話を聞けたりするので、コミュニケーションも楽しいです。また他人の作品を見ると刺激になるし、1人でこもって作業しているよりも吸収できることが断然多くなりますね。
そもそも1人で作っているだけでは有名ブランドとコラボも出来ないし、そもそもブランドと繋がることすら難しい。日の目を浴びるまでは、社会から疎外されている感覚にもなる。しかしNewMakeを通してブランドとコラボする形になり、やっと社会と繋がることが可能になる。本当に有難く幸せな環境だなと思います。

今後NewMakeの活動を通して、やってみたいことはありますか?

今後も作りたいと思ったブランドで作品を作っていきたいです。そして出来上がった作品を見て、ブランド側からあなたのデザインで作って欲しいと言ってもらえて、個人としてブランドとコラボができたら更に嬉しいなと思っています。また、NewMakeに参加している人は私を含め無名の方も多いと思いますが、そんなことは全く関係なしに、もっと全体が注目されてみんなが活躍できたらいいなとも思います。たくさんのクリエイターが集まって何か1つのものを作ってみたいなとも思います。

ー礼さん個人としては、今後どういう活動をしていきたいですか?

これからもっと引き出しを増やして30代後半〜40代になった時に、自分のブランドを持てたらいいなと思っています。コレクション発表のショーをする時はショーピースを作って、それをリアルクローズに落とし込んで販売できるコレクションブランドが理想です。それまでは色んな現場を見てみたいと思っています。衣装の作り方も勉強しながら、ジュエリーに関することやアート制作をしたり、コレクションのショーの曲も作れたらいいなと思っているので、音楽ももう一度触れたいと思っています。感性を磨けるようなことは全て取り入れたいので茶道や華道も祖母から受け継いで習得したいと思っているし… どう考えても人生の時間が足りなさそうですが。笑      兎に角、何かを表現する上では全部自分の目と身体で現場を体感して、自分の感覚で形を作っていきたいと思っていて。そしてその道中、同じベクトルで活動できる仲間を見つけられたらいいなと思っています。
また、世の中の人々がもっと音楽やファッション、アートを気軽に楽しんで、年齢問わずクリエイターが増えるといいなとも思っていて。色んな価値観で服をコーディネートして着たり、制作する人がもっと増えたら楽しいなと。服作りは本当に奥が深くて学ぶことが沢山あるので、高校生のうちから本格的な服作りやファッションを学べる機会が増えても良いと思うし、もっと気軽に音楽をやってもいいと思うんです。日本はストリートパフォーマンスやウォールアートも自由に出来ないけど、SNSで発信することは誰でもできる。そこから生まれる色んな表現や化学変化を見たいし刺激をもらいたい、与え合いたい。かっこいいものは、かっこいいと素直に発信して、みんなが個性を認め合える。そういう世界を見たいなと思っているので、遠い将来は学びの場や活動の環境を作るということもやりたいことの1つではありますね。

これからも多くのものを吸収し成長し続けるであろう礼さん。
直接お会いすると穏やかで優しい雰囲気を纏われているのですが、好奇心や興味の幅は広く、やりたいことにどんどんチャレンジしていく。そんな姿がとても魅力的だと思いました。
礼さんの魅力や熱量がインタビュー記事からも伝わって、更なる物語が生まれることを願っています。

文・前口 祐喜子

前編はこちら→https://aete.co.jp/special/newmake/coleman1/

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