AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

編集・ライター
佐々木 梨緒

知らない場所を探したり、人に話しかけてみたり。 実は人見知りだけど、もっともっと沢山の人に出会って、 色んな文化や物語に触れたいから、 目指せ人見知り克服。

2020.01.30

恵庭で出会う。主人公的な魅力と自信と責任を持つ佇まいの人。

和えて special


▪夏がはじまった日

綺麗な電飾の光が照らす中、発電機の音と人の歌声が響き渡った夏のフェスティバル、
「アグラクロックフェス」。
このイベントの主催者は、喫茶店「アグラクロック」店主の「ずーちゃん」。
今回は二周年を記念した、二回目のフェスだ。
それは不思議な空間だった。家族でもないのに、家族にとてもよく似た関係性が、緩く結ばれたリボンのように会場を包んでいた。そのひとつひとつを結んだのが、ずーちゃん。この人が居てこそ、この空間は形作られたのだった。

 

▪北海道で出会う旅人と地元民

北海道は恵庭市の「柏木地区レクリエーション施設キャンプ場」。
フェス会場は、昨日のどしゃ降りがやんでいたので、曇天で落ち着いた雰囲気があった。
わたしは10日午後に車でたどり着いた。設営はほとんど終わり、キャンプ場ではバーベキューが始まっていた。

 

 

「バーベキュー」、「ロックフェス」。そのような言葉では想像のつかない光景が、会場に広がっていた。色んな素材の布が敷かれ、クッションがたくさん置かれていたり、舞台には素敵な旗と懐かしいような心地を催させる電飾で飾られていたり、初めて来たのになぜか「懐かしい」。
はじめてずーちゃんに会い、はじめてその想いに触れられるわたしは、ノスタルジックな雰囲気に緊張がほぐれた。

 

 

ずーちゃんが誰かはすぐにわかった。赤いチュニックワンピース、スニーカー、ミディアムヘアに、ずーちゃんが振り返ったときに見えた印象的な透き通る茶色の瞳。小柄でかわいい、と思ってしまう一方で、主人公的な魅力と自信と責任を持つ佇まいの人。
だからきっと、誰だってずーちゃんがすぐにわかると思う。

▪アグラクロックという喫茶店

アグラクロックは、北海道は恵庭にある紅茶の喫茶店だ。今回のフェスは、オープンの二周年をみんなで祝い、楽しむものである。ここには入れ代わり立ち代わり、40人ほどが、会場である柏木レクリエーションのキャンプ場に集まった。なぜ2周年でここまで人があつまり、こんな雰囲気の場所が出来たのだろう。

ほんとうに行ってみたくなって、後日アグラクロックを訪れると、あのフェスがどれだけアグラクロックの雰囲気をそのままに見せているのかが分かった。色とりどりの布で彩られた店内、沢山の座布団、クッション。それはまるで家のリビングのようにあったかい。
木製の楽器、一品ずつ丁寧に選ばれたようなマグカップ、その布も、内装も、愛情を受けて作り込まれたこの喫茶店は、柔らかく来客を迎えると同時に、この地で生きて行こうというずーちゃんの気概をも感じられるものだった。
地域に根付いていて、お客さんの日常と地続きにある。こんなふうに世界観の安定したカフェだからこそ、キャンプ場に持って行ってもそのままに実現したのだろうと思った。

▪たくさんの人と知り合って、バーベキューをする

それでも和やかな空気の中に自分が入り込んでいく勇気のなかった私を、ずーちゃんはそれぞれの話の輪の中に私を連れて行ってくれた。私はそこでいろんな人と知り合うことが出来た。本当にいろんな人が居た。日本一周を始めた人、世界一周を夢見る人、恵庭に拠点を持たない旅人、地元の高校生。
ひとりの店主、そして恵庭のカフェというとても限られた一つがこの輪の発生源。だから、このイベントには家族のような安心感があった。

▪ずーちゃんとは?―トークイベント―

トークイベントでは、「学生時代」「留学」「一人旅」「創業」「二年経って」「ミライについて」の5つの話題で「ずーちゃん」について掘り下げることに。
まずはずーちゃんの自己紹介から。好きなことは「お喋り」「出逢い」「音楽」「本」そして「旅」。
ずーちゃんは、「皆の夢中が集まるところ。上とか下とか歳とか職業とかそんなものすべてを飛び越えた世界」を目指してきたのだという。
ずーちゃんはどのようにしてそのような考えに至ったのだろう? まずは、学生時代のエピソードから。

 

 

▪「年齢を飛び越えて」

学生時代のエピソードから、ずーちゃんが人との関係をどのようにとらえているかがよく分かった。
それは「人間関係に上下関係をもとめない」ということである。
それは部活、務め上げた実行委員長の仕事など、経験全てからにじみ出るようにずーちゃんの意思は固かった。
人間関係に上下関係をもとめない。そんな人の和を、自分が中心となって作っていく。
アグラクロックは、ずーちゃんが昔から思い描いてきた夢を実現しているのだ。

▪人との対話は、言語の壁を超える

留学をしたという経験からも、ずーちゃんは今のずーちゃんの姿勢にとっての大切なことを学んだ。英語が出来ないまま行ったそうだが、そんな中わかったことは、「もともと英語が出来なくても、一緒にいる分、その子の英語は分かるようになった」ということ。言語の壁を時間が越えたという経験は、ずーちゃんにとって「能力より人と対話をしていくことが大切」だという気づきを得たのだった。
色んな旅を経て、やがて、ずーちゃんは世の中にはお金で買えない価値があることにも、気が付いた。

▪色んな人の、帰る場所をつくる

色んな旅を経て、見知らぬ土地へ飛び込む良さから、一つ所で待つ良さ。「ようこそ」と「行ってらっしゃい」の良さに惹かれるようになった。
旅はその場所の一瞬を覗き見る事しかできないが、居るから全部の瞬間を見ることが出来る。
だからずーちゃんは、アグラクロックを創業した。

後編はこちらです。ずーちゃんの考える未来と、人々がつくる暖かな雰囲気(恵庭、旅するトーク後編)

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