AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

小嶋 野乃香
編集・ライター
小嶋 野乃香

見たもの、感じたもの、 すべてを自分の「言葉」で彩る人に。 カレーのためなら全国どこへでも行きます。 あと、カメラも好き。

2020.02.18

19年6月6日稲荷町、旅するトーク

和えて special

稲荷町に行くために上野で降りてしまおうか、と迷っていた。いや、でもせっかく稲荷町の話を聞きに行くのだから、稲荷町で降りるべきなのだろう。

銀座線に乗って稲荷町で降りると地上が少し見えたあたりで予想しなかった強い風が地下に向かって吹いてきた。

山下達郎の「さよなら夏の日」がイヤホンから流れていた。6月初旬にさよならはないだろう、と思いながら聞いていたのだが、その日の湿度感と地下鉄を登り切った風の感じがなんだか夏の終わりのようで、エモーショナルな気分のまま向かった。

今回の旅するトークの舞台は稲荷町駅から5分ほど歩いたところにあった。

住宅街の中に可愛く佇んでいるのが今回の旅の会場「まるずcake」。今年の3月にオープンしたばかりの店内には、小さいながらもイートインスペースがあり、私がお店の前に着いたときにはすでに多くの人が集まっていた。

入ってすぐ、白衣の男性が目に入ってきたのだが、インパクトのある出会いを果たしたこの方こそ、今回のホスト、溝呂木さん。溝呂木さんが主催する「稲荷町旅するトーク」はこれで3回目。私が持っているカメラを見て、「写るのは好きなのでたくさん撮ってください!」と言って下さったので少しほっとした。

 

安心すると同時に、改めて店内に並ぶケーキを見渡して私の中の女子の血が騒ぐ。

そして、まるずcakeのパティシエ、宮田佳代子さんとのトークが始まる。

 

旅するトークには、「そこに暮らす人たちに発見がある」、「遠くからきてくれた人を歓迎する」という2つのルールがある。このルールに基づいて、参加者とどこから来たのか、そしてどうして来たのかということを共有することから始まった。

 

「どこの駅から来たかも教えてくれますかね…」と不安そうな溝呂木さん。というのも、上野からでもすぐ来られる距離にあるということもあって、どのくらいの人が稲荷町からやってきたのか気にかかったそう。結果は半々。私が最初に思ったことは皆さんも思っていたことだと安心(笑)。しかし、これから稲荷町の隠れた魅力がこの井戸端会議で明かされることとなる。

あったかさを目指して、ここ稲荷町に。

幼い頃からパティシエになることを志した宮田さん。

食べ物が表現できる「あったかい空気感」を信じ、そんなお店を作りたいと思うようになった。

しかし、まるずcake開店に至るまでには、色々な試練があったという。

特に大手企業に勤めていたときに携わった製品開発の経験が宮田さんを動かした。宮田さんの話によると、大手企業の場合、大量生産を目指しているためにどうしても企業目線になってしまう。さらには、同じものを大量生産するために、化学物質が使われることもある。それまでオーガニックのものを使うことが当たり前だった宮田さんは疑問に感じるようになっていた。

全ての経験が、今のまるずcakeへのこだわりに繋がっている。

ショートケーキを頂いて

そして、実際にショートケーキを頂けることに!(歓喜!) 卵、砂糖、小麦粉、バターはオーガニックにこだわっているという。

生地がほわっほわで、強すぎない甘さ。何度もリピートしているという参加者の方からプリンやチーズケーキもおいしいよ!と教えていただいた。実際私だったら10個くらいはいけるな、と本気で思いながら、ケーキが並ぶ棚を見る。実際のオープンイベントでは、食べ放題も実施したらしく、もっと早くこのお店と出会えたらよかった…と後悔。「食べ放題」こそ私の出番なのに。

卵は無農薬にこだわる農家と契約しているという。宮田さんの取り組みは、同じような志を持つ生産者をも救っているのである。

下町ならではのケーキ屋さんに

今回、実は旅するトーク初参加の方が多かった。参加者の方には、まるずcakeを通り過ぎたとき、たまたま旅するトークの告知があって参加を決めたという方もいれば、以前からまるずcakeのファンで、という方もいらっしゃった。なんだか、皆さん、とても近い距離でつながっているような気がした。

 

「ここに来るみなさんは、いつも何か一言、感想を言って帰られるんですよね」と宮田さんはいう。大きなケーキ店ではなかなか見られない、下町ならではの光景だろう。あったかさを求めている宮田さんにとって、ここで店を開いたことは運命なのかもしれない。また、宮田さん自身、小さなことにこだわらないというスタイルを貫いている。開店準備を始める時間やお客さんの数。さらには、今流行りのインスタグラムも、「時代についていけなくて、、」とやっていないという。「あったかい空間」はこんな素朴さからも生まれているような気がした。そこには、マーケティングや無人レジなどといった「効率化」とは真逆の取り組みで、あったかさを追求し続ける宮田さんの強い意志を感じた。

 

消費者として、私が感じたこと。

そういえば、今まで自分の健康を考えて食を選ぶことはあまりなかったことに気が付いた。安価でおいしいのならそれでいいじゃないか!私がそうだったように、そう思っている方も少なくないはず。けれど、それは知らなかっただけでなく、知ろうとも思わず、ただ安価なものに踊らされていただけではないか、と今回の旅するトークで思った。私たちは、消費者として生産者や加工者に思いを巡らせてみるのもいいかもしれない。

今後は、身近なところで本当のファンを増やしながらも、オーガニックの素晴らしさを広げる活動をしていきたいという。それが宮田さんの願いであるとともに、それを知った私にできることは応援なのかなと思った。稲荷町で美味しいケーキを食べていたら、いつの間にか応援したい人に出会えた日だった。

小嶋野々香


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