AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

早川 遥菜
19年度編集長
早川 遥菜

ハンバーグが大好きと公言していますが、 「母の作る」ハンバーグが大好きなのです。 気持ちに素直な人であり続けるために、 今日も沢山の物語に出会います。

2018.10.13

18年10月13日東銀座、旅するトーク

和えて special

■秋と曇り空と東銀座

いつもと何かが違う。

迷子になってないから?それとも、通信制限じゃないから?

違う、街が明るいんだ。

私がこれまで参加してきた旅するトークは全て夕暮れ時。東京のキラキラした夜は、田舎育ちの私に小さな不安を持たせていたのだろうか。いつもより今日はなんだか安心して、心拍数も高くない。

空が明るいと、歩く人々の表情が見えたり、いつもより街並みがよく見える。迷子になって、走るたびに大汗をかいていたのもたったの2か月前の話なのに、今は歩く人が長袖やカーディガンを羽織って、サンダルを履いている人もいない。そういえば今年の夏は暑かったなあ、と思い返しながら顔をあげると、街路樹の木の葉は枝からだいぶ落ちて人々の歩く通りを敷き詰めている。いつもはキラキラしているはずなのに、秋という季節に曇り空が合わさって、どことなく、寂しい。銀座の寂しい街の表情を、私は初めて見た気がした。

■心を込めたおもてなしのために

今回の旅するトークの会場は「銀座長寿庵」さん。のれんをくぐる前に「旅するトーク」と書かれた張り紙を発見した。この中に、今日の旅を共有しあえる方たちがいるのか、と思うと、緊張していなかったはずなのに、無性にドキドキしてくる。

今回の旅の案内人は店主の天野徳雄さん。挨拶もそこそこに、何やら天野さんはとても忙しそう。私は邪魔にならない様にと慎重に荷物を置き、席に着く。

ん?テーブルに置かれた一枚の紙を発見。こっそりのぞいてみると、なんと今日の旅のスケジュールが全て書かれていた。この説明をしている時に準備するものは何か、そしてなんとボケを入れる場所まで書かれているその紙から、参加者を心からおもてなししようとする天野さんの努力が伝わってくる。旅の始まりから、いいなあ、素敵だなあ、と思うのは今回が初めてではないけれど、心が奥の方からほこほことしてくる感じ。

 

■長寿庵で店員体験をする

お蕎麦の由来、長寿庵の歴史、それから長寿庵が発祥だといわれている「鴨せいろ」の誕生秘話。スライドも用意してくださった天野さんの準備万全な説明に、参加者一同熱心に耳を傾ける。私も蕎麦は大好きなので、新しい発見があっただけでお蕎麦と私の距離がぐっと縮まったように感じる。それにしてもスライドに映る写真を見ただけでお腹が鳴ってくるなあ。…ああ、おいしそう。

そして今回の旅するトーク、実は天野さんのお話だけに終わらない。

歴史やエピソード紹介がある程度終わると、天野さんはまた忙しそうに厨房の中へと入っていった。厨房の中をのぞくと、小さな台に小皿がたくさん。天野さんによると、どうやら次は、「そば寿司」づくりの体験をさせてもらえるようだ。

それにしてもあまりにも天野さんが大変そうなので、私もお手伝いをすることにした。実はわたし、普段パン屋でアルバイトをしているので接客には大変自信があった。今日はパン屋ではなく長寿庵の店員さんになりきって、本物の店員さんに負けない様にと一生懸命お盆に小皿を乗せて運んでいく。

「おねえちゃん、お水持ってきてくれない?」「これはどうやって食べるの?」

私があまりにもお蕎麦屋さんに溶け込んでいたからなのか、どうやら私はここで働いている人だと思われているようだ(笑)。東銀座のお蕎麦屋さんでまさかアルバイト体験ができるなんて夢にも思っていなかったけれど、気が付いたらものすごく楽しんでいることに気が付いた。

 

■そば寿司をみんなで作る

ところで「そば寿司」というものは、手巻きずしのお蕎麦バージョン、と表現するのがふさわしいだろうか。すだれの上に海苔を置き、お米の代わりにお蕎麦を乗せてその上に具材を乗せて丸めていく。お蕎麦と一緒に巻くのは、しそ、卵、きゅうり、それからよく味がしみ込んだしいたけ。主婦の皆さんはさすがに手際がよい。私が作ったらこんなに上手に巻けないだろうなあ…

そして出来上がったそば寿司は、天野さんが一つ一つ綺麗に包丁で切ってパックに詰めていく。

今食べても、お家に持ち帰って食べても大丈夫なように、という天野さんの美しいおもてなしの気持ちがこのパックという形に詰め込まれている。今日のトークはもう天野さんの心遣いだけでお腹がいっぱいだ。

みんなで自分たちが作ったそば寿司を見せ合いながら、お互いを誉めあい、そして味を楽しむ。料理をただ楽しむだけではない旅するトークは、お客さんとして食べに行くのとはまた違った美味しさがあるのだ。

 

■寂しい、なんて

私は午後から学校があったため、旅の終わりまでいることが出来なかった。お先に失礼してお店を出る。

東銀座の空は、相変わらず曇り空だった。でも私には、その灰色の空でさえ、甘いミルクティーがこぼれたような優しい空に見えた。寂しいなんて感情は、この街にもう持つことはなくなっていた。

今回もたくさんの人に出会った。徒歩で来た人もいれば、一時間かけてわざわざ来てくれた人もいた。大きな場所を借りたり、大掛かりな準備をしなくても、人と人がつながれば自然とそこにみんながちゃんと集まって、思いを共有することができる。

それが旅するトーク。

覚悟はいらない、少しの好奇心があれば。

早川遥菜


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