AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

小嶋 野乃香
編集・ライター
小嶋 野乃香

見たもの、感じたもの、 すべてを自分の「言葉」で彩る人に。 カレーのためなら全国どこへでも行きます。 あと、カメラも好き。

2019.12.30

銀座シンボル木村家を中心に、銀座の様々な顔を垣間見る旅

和えて special

▪時が止まった私と大人になった友達

その日は、幼い頃からの女友達とお昼を一緒にする約束をしていた。女同士ではあるけれど、私たちはよく、ワイシャツの腕をまくるサラリーマンが多く来る定食屋さんに行く。

オシャレなカフェで話をするよりも、忙しくご飯をかき込む人たちの中で、恋愛話を長々とするのが好きなのだ。

そんな私の友達は、銀座の居酒屋でバイトをしているらしく、私がこれから向かう銀座までの行き方を教えてもらうことになった。すると、「新宿から丸ノ内線ですぐだよ。わからないの?」と言われてしまった。

いやいや、私たち最近まで地元の高校でワイワイしていたのに、いつから友達は銀座へ簡単に向かえるような人になってしまったんだ。

よく行く新宿南口近く定食屋さんの鏡には、少し大人っぽくなった彼女と、あれから何も変わっていない私が映っていた。

▪銀座の真ん中「木村家」

待ち合わせ場所である木村家の前は多くの人が立ち行く。私自身、「木村家」が銀座にあることは知っていたがこうして来たのは初めてだった。

ぞろぞろと会社員の方々が集まる。今回は京橋で働く「brother」の社員さんたちがフレックス勤務後に来てくれた。今回はあんパン作りということで女性が大多数だと思っていたが、見渡してみると、昼間に定食屋さんで見たような「ワイシャツの腕をまくったサラリーマン」も多くいて、驚くとともにホッと安心感を覚えた。今回は普段はフレンチビストロとして使われている「木村家」という掛け軸が目立つ広めのフロアで、あんパン作りを体験するらしい。木村家さんがわたしたちに作り方を説明してくれた。その説明があまりにも簡単だったので、思わず耳を疑ってしまった。

 

まずは、生地を実際に触ってみた。思ったより柔らかく、まるで赤ちゃんのほっぺたみたいだ。そこから、小籠包のように上を包んで、餡を包む前の状態にしていくのだがこれが案外難しい。手前の女性陣はかなり器用に包んでいるが、普段から作っている人はおらず、みなさん初心者。普段会社に勤める方なら、なおさらパン作りなんて習慣的にやらないことだろう。

男性陣はどうか。こちらは和気あいあいと楽しんでいる。私が2時間前に見たようなサラリーマンたちが今ここでパン作りを体験していると考えると不思議だ。私だけではなく、「さっきまでパソコンの前でカタカタやっていたのになぁ」とつぶやいている方もいたのが、またこの体験の醍醐味である。

その後は成形し、真ん中をつぶし、塩梅をのせる。私も実際に体験したがなかなか難しく苦戦したが、これを大量生産するコツがあるのだそう。

普段これを一時間で500個ほど作るとおっしゃっていたが気の遠くなる作業だ。一人5個ずつあんパンを作り、それが焼けるまで待つ。その間に参加者の質問タイム。現場の方から話を聞けるのはすごく貴重だ。

▪日本の、そして銀座の「木村家」であるからこそのこだわり

今回あんパン作りのレクチャーを担当していただいた方は元々ここ銀座ではなく、工場勤務だったそうだ。工場で働いていた経験があるからこそ、工場とは違う、ここ銀座ならではのこだわりを持ってあんパン作りに日々熱を入れているという。木村家の日本の材料へのこだわり、従業員の皆さんの熱いあんパン作りにかける思いを聴くことができた。やはり、作り手の「想い」があってこその木村家のパンだという。

▪できあがるまで、銀座街歩き

ここからは、焼きあがる時間まで銀座街歩き。各自、音声デバイスが配られ、それを装着してさっそく始まる。今回案内してくださるのは、中央区観光協会認定ガイドの山本さん。

ガイドをしてくれた山本さんは、普段は銀座で働いていらっしゃる方。このガイドはボランティアとして、銀座の魅力をもっといろんな人に知ってもらいたいという思いで観光案内をしているという。銀座が今の姿に変わっていく様子を見てきて、それでも残っている昔ながらの銀座の強い美しさを知っていらっしゃるのだろう。

この女性の街を愛する気持ちと姿勢が、今回私の中で特に忘れられない方となった。

銀座の真ん中にある木村屋を出て東銀座の方向へ向かう。イヤホンでは山本さんが、今自分がいるこの場所が、どんな物語を持つのかを話してくれて、より街歩きを深く楽しむことができた。

高校のときは日本史を勉強していたこともあり、自分が知っている歴史上の人物の名前も説明の中に出てきて、なんだかとても懐かしい気持ちになった。

銀座といえば、カッコイイ先鋭的な建物のイメージが強かったが、昔からずっとある日本の大切な文化がここには詰まっている。歌舞伎座を訪れたのは初めてだったのだが、日本を全面に出したこの建物の後ろには高層ビルがあって、先鋭的な銀座のカルチャーと古くからある日本伝統的なカルチャーを、同じ絵の中に見ることができるのが面白い。

銀座初心者の私にとっては全てが新しく見えるのだが、普段京橋で働く社員さんに話を伺うと、いつもとは違う銀座を見ている気がする、と言っていたのが印象的だった。

私が前から行きたいと思っていた喫茶店や一方で手の届きにくそうな高級料理店を交互に通り過ぎ進んでいくと、

「ここのお店はランチがお得です!」という山本さんの歴史だけではなくランチなどの情報が入った。

社員さんたちも、そして学生の私も山本さんのガイドについメモを取ってしまうほど聞きほれる情報ばかり。街を深く知る人に教えてもらう街歩きって、こんなに楽しいんだ。

そして、人がすれ違うことのできないくらい細い裏路地には居酒屋やバーなどが点在していた。社員の皆さんもこんなところにお店があったことに驚いた様子で、「次の飲み会はここで!」とはりきっていた。

私にはまだ少し早いけれど、「大人」になったらこういうところでお酒を嗜んだりするものなのだろうか。子どもを寄せ付けないその雰囲気にただただ圧倒される。

人々が行き交う「中央通り」の裏には、奥ゆかしくてこんなに色っぽい裏路地「金春通り」が存在する。なんだか背伸びしてしまった気分だ。そして、裏路地を通り抜け、私が憧れている資生堂パーラーを通り過ぎ、カフェ パリウスタの前で一度解散。あとは各自であんパンの焼きあがりを待つまでの自由時間だ。

▪いざ、焼き立てのあんパンをいただく

時間になったので、あんパンを取りに行く。私が作った一つはどうやら焼けなかったらしいが、できたてのあったかいあんパンをいただけた。

甘すぎない餡子とふわっふわのパンが本当にあっている!餡子とパンを合わせようと考えた人、天才だ…。社員の皆さんも、自分のパンをひとつずつ取って食べる。

▪大人になりきれなかった私と銀座の関係性

すっかり夜の、大人の街になった銀座の地下鉄に向かって歩きながら思う。

銀座のシンボルである木村家を中心にして、色んな顔を持つ銀座を見ることができた。キラキラしているショッピング街としての銀座、日本の伝統的なカルチャーを守り続ける銀座、裏路地の少し背伸びした、大人の銀座。知らないことばかりだった、けれど今回で少しだけ銀座と私の距離も縮まったのではないか。そして、そんな魅力をたくさんの人に伝えようとしている人たちがいること。伝統と革新が両方ある街、今回知ることができたのはきっとほんの一部にしか過ぎない。私はこれからもこの魅力に引き込まれていくこと間違いない。

 

小嶋 野乃香


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