AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

副編集長
前口 祐喜子

札幌生まれ、横浜育ち。海とカメラとカフェが好き。

2023.06.22

NewMake×酒井美香ー靴への愛と敬意を込めて、自由なモノづくりー

和えて special

ー制作過程で1番大変だったことは何ですか?

スニーカーを解体して1つの生地を作ったんですけど、その配置(パーツの配置)に1番悩みました。作品の制作期間は5日間くらいでしたが、3日くらいは生地制作にかけています。全体のバランスを何回も考えました。元のスニーカーを全て、余すことなく使いたかったからです。解体しても捨てずに全部使うこと。それが本当のアップサイクルだと思うので。

スニーカーを解体して生地を作る時、タンを外さずにそのまま広げて1枚の布に置く人が多いと思いますが、私はそうせず全パーツが分かりやすくなるように工夫しました。
例えば、インソールをわざとタンの部分に使って目立たせたり。紐もそのまま使っています。
アウトソールも捨てたくなかったし、むしろ主役にしたかったので肘掛に使いました。アウトソールは普段踏んでいるので見ない人が多いと思うんですけど、この部分もメーカーごとに柄や模様のこだわりがあって面白いんですよ。

椅子にした時の完成形を想像しながら、ある程度靴の形が残りつつ、バランスが良い見た目を模索しました。このバランスの調整が1番大変でした。

ー椅子の表面はモノトーンですが、裏側は元の椅子のままですよね。何か理由があるのでしょうか?

「100Sneakers100NewMakers 2023」のテーマである”Journey”という言葉は、私にとって自由や向上に繋がること、とにかく動いて色々なものに出会うこと。だからどこにでも溶け込める、どこにでも旅立てる作品にしようと思いました。そのためにモノトーンの色合いにしています。このイメージに合う配色の廃棄予定のスニーカーを探しました。
それに、どこかに元の椅子の形跡を残したかったんですね。そのほうが椅子も嬉しいんじゃないかと思って。古民家をリノベーションする時に梁を残すような感覚です。そのため敢えて裏側には手を入れず、そのまま残しました。

ー完成した作品を見て、ご自身で思うことはありますか?

「アップサイクルとは物を長く使うこと。」
これはRECOUTUREオーナーの廣瀬さんの言葉ですが、作品を通してこの言葉を表現出来たと思います。
靴のままではサイズがあるので、24.5の場合、24.5のサイズの人しか楽しめません。でも椅子になれば、サイズがなくなります。性別も国籍も関係なくなります。楽しめる人が増えるんです。
アップサイクルを通して、靴を自由にしてあげられたと思います。

ー見事グランプリを受賞!周りの方の反応はいかがでしたか?

グランプリを受賞したことはまさかでした!
会社の人は「そんなことできるの?!」「意外だけどすごいね!」とか。みんなにびっくりされました。
他の出展者の方からも感想を頂けて、嬉しかったし勉強になりました。「そういう発想がなかった」と言われることが多く、自分は柔軟で視点が変わっているのかなと思いました。靴を解体して違うものにする発想もない人が多かったみたいです。RECOUTUREでは当然だと思っていたけれど、そこに意外性があるんだと思いました。改めて凄いことを学んでいたんだなと実感しました。
来年もあるなら参加したいし、違うものを作ってみたいです。こんなに大勢の人に作品を見てもらう機会はなかなか無いので、出展して良かったです。

■ 未来について思うこと

ー受賞時のコメント「企画を通して日本が抱える環境問題を改めて実感しました」が気になりました。どんなことを実感されたのでしょうか?

廃棄問題について洋服のことは聞いていたけれど、靴も廃棄されているということは知らなかったんです。靴が廃棄される背景自体知らない人が多いと思います。まずは知ってもらうことが必要だと思いました。

ー靴の廃棄問題を解決するために、どんなアクションが考えられますか?

靴はサイズが限られるので難しいとは思います。海外に送っても履ける人が限られてしまうし。
そう思うと、今回の作品で作ったように、靴ではない違う形に生まれ変わらせることが良いのかなと思いました。靴を解体して生地にすれば何にでも使えるので。サンダルやカバンなども作れますし、色々と展開できると思います。

ー酒井さんご自身は今後どのような活動をしていきたいですか?

今の仕事を続けながら、靴やレザーにまつわる物を作りたいです。
プロや職人を目指すのではなく、作りたい物を作りたい時に作る。
廃棄されるスニーカーでも、もっと色々な物を作りたいです。廃棄予定のスニーカーも沢山頂きたい。クリエイターとして面白い物を作っていきたいです。

学生時代から靴好きで、自宅に120足ほどのコレクションがある酒井さん!
インタビュー中も靴への愛を存分に感じました。そんな酒井さんにアップサイクルされた靴は幸せだと思います。また「アップサイクルされることで靴が自由になる」という発言も印象的でした。
酒井さんの今後の作品も楽しみです!今後の活動もぜひチェックしてみてください。
酒井美香Instagram:https://www.instagram.com/09mika90/

パッチワークチェア コンセプト写真
Photographer:西郷利基 (Instagaram : https://www.instagram.com/riki_saigo/)
撮影場所:学校法人水野学園ヒコ・みづのジュエリーカレッジ(HP : https://www.hikohiko.jp/

文:前口祐喜子

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