AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

22年度編集長
中村 斐翠

真っすぐな人のきらきらした目が好きです。 正しいときに、正しい重さの言葉を選べるようになりたい。

2023.02.28

100 My Licca―お洋服と、思いと、リカちゃんと―

和えて special

サステナブルなファッションコミュニティ「NewMake(ニューメイク)」では、個性豊かな作り手が、日々お洋服のアップサイクルに取り組んでいます。
そんなNewMakeで3月から新しく始まるのは、「100 My Licca」という企画。
たくさんの思い出の詰まったお洋服を、リカちゃんの衣装に作り替えることで、思いを新たに繋いでいこうという取り組みです。
今回モデルとして協力いただくリカちゃんは、ファッションやスイーツの好きな小学5年生の女の子。知っているようで知らないリカちゃんのことや今回の企画に込めた思いを、リカちゃん事業部部長の向井里奈さんに伺ってきました。

知っているようで知らないリカちゃんのこと

ーリカちゃんはどのようにして生まれ、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか。

リカちゃんは1967年に誕生しました。
それまで海外のお人形はあったけれど、サイズや見た目が日本の子ども向きではなかったんですよね。「日本の子どもたちのためのお人形を」という思いから生まれたのがリカちゃんなんです。
現在まで続く56年の歴史の中で、累積販売体数は6000万体以上にのぼります。親・子・孫と3世代に渡り遊んでいただいているという意味では、幅広い方に受け入れていただいているキャラクターなのかなと思います。

ー幼少期に親しんでいたリカちゃんですが、そんなに長い歴史があるとは知りませんでした。その中で、変わらず大切にされていることはありますか?

お洋服というところでいえば、ラインナップの幅広さについては56年間ずっとこだわっていますね。
おもちゃ売り場に行っていただくとわかると思うのですが、売り場には常に5〜60種類のお洋服が並べてあるんです。流行りのデザインももちろんですが、子ども服ではなかなか商品化されないようなデザインだったり、子どもたちの憧れるような職業の制服だったりも揃えています。お洋服に対する子どもたちのたくさんの憧れや夢を、リカちゃんを通して叶えてあげたいという思いがあるんです。

ーパンフレットを拝見しましたが、パティシエやお医者さん、プリンセスと多岐に渡るお洋服を着たリカちゃんが並んでいて、大人の私でもわくわくしました。
ドレスを着せてアイドルやプリンセスになりきったり、学校の制服を着せてお姉さんになりきったり、いろいろな世界を体験できそうです。

リカちゃんのブランドコンセプトは「Be colorful!」です。これは、「いろいろなものになれる」というような意味合いで、リカちゃんを通して子どもたちが自分の夢を見つけるお手伝いをしたいという願いが込められているんです。
たくさん展開されているリカちゃんの家族や友達も含めてごっこ遊びをすることで人との コミュニケーションを疑似体験できたり、長い歴史を持つからこそ大人も子どもも一緒に なって楽しめたり。先ほどのお洋服についてもそうですが、子どもたちの夢や憧れのために、 リカちゃんだからできることがあるのかなと思っています。

ー作り手側として、リカちゃんをどのような思いで送り出していますか?

子どもにとってリカちゃんは、時に自己投影の対象であり、時にお友達であり、時にお姉ちゃんでありというような存在だと思っています。なので、子どもたちに常に寄り添えていたらいいなというのは考えていますね。
コロナ禍で外出機会が減ったとき、当時の新商品「ゆめいろリカちゃん」の売れ行きがすごく伸びたんです。外に出れない代わりにおうちでリカちゃんで遊んでくれたのかな、少しでも子どもたちの癒しになれていたのかなと思うと、なんだか泣きそうになったんですよ。外で友達と遊べないときや嫌なことがあるとき、もちろん楽しいときも、常に子どもたちのそばにいる存在がリカちゃんであってほしいと考えています。

■リカちゃんの服作りについて

ーリカちゃんのお洋服は、どんな過程を経て生み出されているのですか?デザインのインスピレーションはどこから得ているのでしょうか?

子ども服の売り場を見に行ったり、子ども向けのファッション誌を参考にしたりしつつ、日々お子様のお洋服のトレンド研究をしています。
その上で、ざっくりしたテーマを決めて開発メンバーでスケッチをたくさん書くんです。それをもとにお子様にアンケートを取り、人気のあるものを商品化しています。

ー最終的に決めるのは子どもたちなんですね。

そうですね。商品化において、お子様目線というのは常に意識しています。
世間的に流行っているものをお子様に見せてもピンとこない、ということが意外とあるんです。トレンドをキャッチすることも重要だと考えていますが、それがお子様の望まないものであるなら、いくら流行りのものでも間違っています。ですから、商品企画において、お子様の声に耳を傾けること、お子様と一緒に歩くことはかなり大切にしていますね。お子様の声で我に帰ることも多いです。

ー他にお洋服作りにおけるこだわりはありますか?

リカちゃんに着せた時にかわいいかということも、大事にしていることの一つです。
普通の人間が着るとかわいいものも、リカちゃんのサイズにするとかわいくなかったりするんです。例えばレイヤードをすると着膨れてボリュームが出すぎてしまったり、オーバーサイズのお洋服はバランスが悪くなってしまったりなどですね。
そういうときは、デザインは取り入れつつも構造はリカちゃん風にアレンジしています。実際にレイヤードするのではなく、襟や裾だけを取り付けることであたかも重ね着しているように見せる、といった感じです。

リカちゃん仕様に、という点では生地の柄などもそうです。普通の生地屋さんで手に入る布では模様が大きすぎてしまうので、リカちゃんサイズにプリントし直したものを使っています。ジッパーやボタンといったパーツもそうですね。生地や素材はかなりこだわっているところです。

ーリカちゃんサイズでどうかわいく見せるか、というのは今回のNewMakeでも鍵となってきそうですね。

「触れる物」であるリカちゃんの価値

ー今回の企画に対し、どのような出会いや気持ちの変化を期待しますか?

先ほども触れたように、リカちゃんは長い歴史を持つ3世代キャラクターです。
親子で参加していただく方には、リカちゃんのお洋服をアップサイクルすることやそこで生まれる会話を通し、思い出を共有し、物を大切にすることを一緒に体感してほしいなと思います。
それと、この企画を通じて久しぶりにリカちゃんに触っていただく方もいると思うんです。リカちゃんで遊んでいたころを思い出し、昔の自分と出会い直すきっかけとなれたら良いなと考えています。

ー本企画に限らず、リカちゃんに触れること自体を通して得てほしい気付きなどはありますか?

やっぱり、大切に長く遊んでもらうということですかね。
長く遊ぶためには、髪の毛をとかしてあげるとか、お洋服を乱暴に扱わないといったお手入れが必要になります。そんな過程を経て「物を大切にする」ということに気づいてほしいと思うんです。

デジタルが台頭し、YouTubeやゲームのような画面越しのものもたくさん登場している今、リカちゃんが「触れることのできる物」である価値を改めて感じています。
長く遊べば汚れるし、髪の毛はぐちゃぐちゃになります。けれど、それを整えてあげたり、綺麗にしてあげたりという過程を経て、愛着が生まれると思うんです。これって「触れる物」ならではのことではないかなと考えていて。
お人形というかたちにずっとこだわり続けているのもそういう理由からですね。

ー「物を長く大切に」ということに関しては、大人である私たちのほうがむしろハッとさせられる気がします。

ファストファッションでもそうでないものでも、本当に気に入ったものを買って長く使った方が絶対にいいし、リカちゃんも気に入った子を買ってその子で長く遊んでもらえる方がいい。今回のアップサイクル企画が、リカちゃんをはじめとした物の価値や消費のあり方を改めて考え直すきっかけの一つとなればいいですね。

一つ一つを丁寧にきちんと選ぶこと。
手入れをしたり足りないものを補ったりしながら、長く大切に扱うこと。
当たり前のようにも思える物の接し方を、私たちは案外見失っていたのかもしれません。でも、「物を大切にすること」は、SDGsに繋がる最も身近な感覚ではないでしょうか。

たくさんの思い出を共有した素材をお洋服に作り替え、リカちゃんに纏わせることで、素材にとっても自分にとっても新たな出発点となる。
今回の企画でそんなアップサイクルがたくさん生まれたらいいなというふうに感じました。

 

 

 

 

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