AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

編集・ライター
白水 美里

生粋の道民。北海道の冬は苦手だけど、夏が素敵すぎるから、やっぱり北海道が好き。トマトとまちづくりとワクワクしてる人が好き。

2020.10.10

どんぐりのちくわパンが繋げる、ご縁と想い

和えて special

私はパンが大好きだ。パン屋さんで買ったパンがあると、朝いつもより早く起きれてしまうし、お昼ご飯にパン屋さんのパンを持って行った日はお昼休みが楽しみで仕方ない。
子供のころからずっと、ちょっとしたお祝いの日、頑張ったなぁと思う日、元気が出ない日、いつだってパン屋さんのパンを買ってきては幸せな気持ちになっていた。

好きなパン屋さんはたくさんあるけれど、その中でも、目移りしてしまうほど種類豊富なパンとそれぞれのパンに付けられたかわいいポップ、温かい光に照らされてツヤツヤと光っているパンやケーキ、ザンギにサラダまで並んだ、いつ行ってもなんだかうれしい気持ちになってしまうお店が「どんぐり」だ。

今回は、そんな「どんぐり」の野尻社長の旅するトーク。

「参加せずにはいられない!」とずっとずっと楽しみにしていた旅するトークが終わるころには、どんぐりのパンを囲んだときみたいに、大人も子どももついつい笑顔になってしまう温かい空気が会場を包んでいた。

■パンの香りに包まれて

今日のイベントは、オンラインでの開催がメイン。会場に集まることができるのは10人ほど。少し早めに到着した会場は、まちの中にあるごく普通の会議室。
いつもの旅するトークと違って、人の姿も少なく、会場は少し味気ない。

会場の準備をしていると、たくさんの箱を持った男性が入ってきた。
味気ない会場にふんわりといい香りが漂う。
その男性こそ、今日のスピーカーの野尻社長。そして、いい香りの正体は野尻社長が抱えている箱の中に入ったたくさんの「どんぐり」のパンだ。
会場に集まった人たちは、どんぐりのパンを受け取ってうれしそう。
少しずつ会場に漂うパンの良い香りで、無機質だった会議室に旅するトークのほっこりあたたかい空気が流れ始めた。

今日の旅するトークのテーマは、「札幌のソウルフード・パン屋どんぐりのちくわパンが繋げる、ご縁と想い」
ちくわパンは、1日に5万3千個のパンを作っている「どんぐり」の人気ナンバーワン商品だ。ほんのり甘く、ふわふわした生地にジューシーなシーチキンが詰まったちくわが入っていて、とっても美味しい。
そんなちくわパンが、この日は、会場の方はもちろんオンラインで全国から参加している約100名の方に届けられていた。
さっそくみんなでいただきます。

やっぱり何度食べてもおいしい。画面越しでもみんな嬉しそう。そして会場がさらにいい香りになっていく…
不思議と、直接会ったことのない人とでも同じものを食べていると思うと、仲間意識が生まれるみたいだ。今日のイベントのタイトル通り、さっそくちくわぱんで参加者がゆるやかに繋がって、旅するトークがはじまった。

■まちの灯として

実は今回のイベント、本当は3月に実施予定だったものが、新型コロナウィルスの影響で延期となっていた。
野尻社長は、緊急事態宣言が出された中で悩みながらも、すべての商品をラップや袋に入れて販売するなど、対策をしながら営業をしていたそう。
ある方に野尻社長が言われた「どんぐりさんってまちの灯だと思う。開いてて良かったと思ってもらえる。だからこそ、営業している方がどんぐりさんっぽいのでは?」という言葉はとてもしっくりくる。
どんぐりのパンは、北海道の人の生活のすぐ隣で当たり前にちょっとうれしいものとしてずっと近くにある。
そんなどんぐりのパンを食べることで、不安な期間、気持ちが和らいだ方もたくさんいたんだろうな。

そして、この期間、どんぐりはお店を開けていただけでなく、保育園や病院で働く方に3~4千個のパンをプレゼントしていた。
どんぐり自身が、売り上げが減り、大変な状況で、自ら北海道や札幌のために何かしようと申し出たのは、今年で37年目を迎えるどんぐりが、長い間パン屋さんとして地域の方に応援していただいたからこそ、こういう時だからこそ、これまで応援してくれた方に何かできないかというのを考えたからだと野尻社長は言う。

「こんな状況だからこそ」と野尻社長がはじめた取組みがもう一つ。
ネット限定で、誰かにパンをプレゼントする方に普通のパンセットと同じものをもっとお得に販売している「幸せおすそ分けセット」だ。
こんな状況だからこそ、何か人にありがとうと言ってもらえることをする人が一人でも二人でも広がっていけば素敵だなと思ってはじめたそう。
きっと、あたたかくてふわふわのパンを通して、野尻社長の「こんな状況だからこそ、笑顔になれるように、ありがとうを言えるように」という想いはたくさんの人に届いているんだろう。
どんぐりのパンがものすごく愛されているのはおいしいからだけじゃないなぁと感じる。

そんなどんぐりは、創業37年。
職人的な気質のお父さんと、誰かに何かをするのが好きなタイプのお母さんが一緒に営んでいた。
野尻社長の「人に何かをするのが楽しい」というのは、お母さん譲りみたいだ。
今日食べているちくわパンも、お母さんとお客さんの「お弁当に使っているものって、パンにするとおいしいよね。」という会話がきっかけで誕生している。
良い意味で業界の常識に囚われすぎず、お客様とのやり取りを大切にしていた野尻社長のお母さんだからこそ作ることができた商品なのかもしれない。

■どんぐりのパンが種類豊富なわけ

どんぐりの大きな特徴の一つが、いつ行っても、目移りしてしまうほどたくさんの種類のパンがあること。
どんぐりの商品開発は、結構自由みたいだ。
商品開発の人がいるわけではなく、天気が悪い日にお客様が来なくて、時間が空いた時になにか作ってみる、売ってみる。
だから野尻社長も知らない商品が並んでいることもある。
商品開発に絡めて、野尻社長はどんぐりで働く人への想いも語ってくれた。
「特にこれからは、管理されて動く人が新しい価値を作り出すことは生み出すことは難しいし、自分でトライして失敗する、次はトライして成功するという経験が必要だと思うんです。」と野尻社長は言う。
「だから、人材育成担当にお願いしているのは、自分で自分の人生を幸せにする力を身に着けてもらうこと。そうじゃないと、人生面白くなくなっちゃうから。」
たくさんの種類のパンには、どんぐりで働く人たちへの想いも込められていたんだ。

次にどんぐりにお買い物に行ったら、この商品を開発した人は、自分の商品がはじめて店頭に並んで、お客様がレジに持ってきたとき、どんな気持ちだったかなぁと、このパンを作ってくれた誰かのことまで思ってしまいそうだ。

■新作商品を作ろう!

どんぐりと野尻社長のお話を聞いた後は、井戸端タイム。4、5人のグループになって、自己紹介をする。
普通の自己紹介とは違って、肩書や名前ではなく、好きなパン屋さんや好きなパンを紹介する。
そして、今回の井戸端イムはいつもと一味違う。
グループに課されたのは、自己紹介の中で好きなパンの共通点を見つけて、そこからみんなでどんぐりの「秋の収穫祭」のパンを考えること。
今日は全国から参加者が集まっているから、どんぐりにまだ来たことがないのに、自分の考えたパンが店頭に並んで、それを買いに北海道にくる…なんてこともあるのかもしれない!

あらかじめ渡されている、パンのアイディアカードに落書き的にアイディアを書いていく。
「豆パンにはまったきっかけはなんですか?」
「パンはデザートだと思うんですよー。」
「ちゃんちゃん焼き入れたいです!」
なんて、「パンだけでこんなに盛り上がるの?!」と驚くほど、どのグループも楽しそうにパンについて話している。

自由に考えるって意外と難しいけれど、秋の素材を探したり、自分の食べたいものを秋風にアレンジしたり、それぞれが一生懸命考えたパンをお披露目した。
オンラインから参加した大森さん家族が考えたのは、「どうぶつえんパン」「たくさんのひつじパン」「いがぐりパン」
子どもたちが、うれしそうに自分で考えたパンを紹介してくれる。
もはや「秋」のくくりから外れていても、好きなものをパンとコラボさせて、とっても楽しそう。
他にも「電車パン」(何線でも良いそう。)や「コロネごろ寝パン」、「北海道新幹線パン」など、「好き」がつまったパンを紹介している人たちはとっても幸せそうで、画面越しでも温かい気持ちになる。
かぼちゃクリームを挟んだ「かぼかぼサンド」、塩辛い鮭パンともみじまんじゅうパンを合わせて「あきあきセット」、ちゃんちゃん焼きを乗せて辛さをやわらげた「コリアンでちゃんちゃん」など、普通に美味しそうなアイディアもたくさん!

「アイディアって、自由にどんな形で出ても良いものなので、なにかは形にしてみたいですね。」と野尻社長は言う。
どんぐりのインスタグラムで今後の商品については見れるそう。

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