AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

AETE編集部からのお便りです。また正式なAETEの書き手では無いけれど、1度書いてみてくれた書き手たちの記事も載せています。その場合、各記事の書き手は文末でご確認頂けます。たった1度の物語でも、AETEは大切に綴っていきます。

2021.12.29

【みんなのあのね】夜更かし娯楽論集(後編)

会えて report

2021年10月~12月に開催致しました『みんなのあのね vol.2』。

「わたしの夜更かし娯楽論」というテーマのもと、編集部に寄せられた熱い作品レビューをご紹介します。

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■11月17日

普段ゲームをしない人にこそ勧めたいゲーム、という難題を投げられた。悩んだ末に選んだのは「To the Moon」。操作は簡単。PCでもswitchでも出来る。短時間でクリア可能。そしてプレイヤーの心に鮮烈な傷を残す作品だ。

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🎮「To the Moon」(2011)

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本作の主人公(プレイヤー)は珍しい仕事をしている。それは、死期の近い人が思い残すことなく人生最後の時を迎えられるように、その人が叶えたかった夢を仮想現実の中で叶えて、「夢が叶った方の記憶」を依頼人の中で再生する、というものである。今回の依頼人の夢は、月に行くこと。その願いの真相を探るべく、主人公は依頼人の記憶を遡っていく。

ゲームの世界は基本的に悲劇しか起こらず、悲劇によってプレイが根拠づけられるという。本作においての悲劇とは、「主人公(プレイヤー)が依頼主の人生自体を変えられる訳ではないこと」。依頼主の幸福な最期を作っていく一方で、記憶を辿る度に募る無力感。その苦さがこの物語に深みを与えていて、プレイヤーの心を揺らすのだと思う。

美しい音楽と共に月へと向かう旅。切なくも愛おしいこの物語が私は好きだ。

 

▷夢の真相を探り叶えていくことの切なさは、言葉にするより体感する方が身に染みて感じそう。普段ゲームをしない私ですが、やってみたくなりました。沢山の人の夢を叶える主人公自身の夢や思惑が気になるところです。

 

■11月24日

Salyuという歌手がいる。彼女の歌い方は祈るようで、讃美歌のように感じることも多い。そんな彼女の作品の中で最も生命力を感じる曲がLIBERTYだ。

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🎵「LIBERTY」(2007)

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LIBERTYは自由という意味。でも、この曲の主人公は自由ではない。自分で作り上げた悩み、迷い、焦り、苛立ち。そういうものに押し潰されて先が見えないような気がしている。

でも、解放される時がくるのだ。何かのきっかけで抱えきれなくなって、爆発して、ずっと同じ場所にいることなんて叶わない。悩んで、悩んだ先に自由がある。でもその悩みも、悩みの先の自由も、あなただけのものなのだ。

部屋の中に溢れる水、それを蹴り上げる彼女、空を求めて歌う姿。それらはちょっとした美しさすら感じるシーン。そんな彼女の姿を見たり、歌を聞いたりしていると、私は心がふっと軽くなるような気がするのだ。

 

▷Salyuさんの「LIBERTY」、初めて聴きました。繊細ながら力強い歌声と、MVの中で迷いやくるしみとそれらからの解放を表現する彼女に、一気に引き込まれました…!素敵な歌手の方との出逢いに感謝します。「悩みの先の自由も、あなたのもの」という投稿者様の言葉も素敵です。

 

■12月1日

落語が好きだ。人を認め、肯定してくれる優しさがあるから。噺のなかには色々な人が出てくるけれど、本物の悪人というのは一人もいない。みんな人間らしい不器用さや間抜けた部分があって憎めないのだ。誰のことも否定せず、「みんなちがって、みんないい」と認めてくれる寛容さがある。

一人の落語家が何人もの人物を演じ分け、「オチ」のある噺をする。特別な道具も何もいらなくて、そこにあるのは落語家の表現力と、聴く人の想像力だけ。そのシンプルさと世界の広さがまた良い。

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🗣「妾馬」

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そんな落語の中でとりわけ好きな演目が妾馬だ。主人公はどうしようもない兄の八五郎。器量よしの妹・お鶴が殿様の子を身籠ったために、殿様の屋敷へ呼ばれる。礼儀もマナーもてんでなってない八五郎と殿様の重役・三太夫のやりとりが腹を抱えるほど面白い。散々笑ったあと、最後の都々逸で一気に泣かされる。

ちなみに、古今亭志ん生師匠の妾馬が最高だ。YouTubeにあるので是非聴いてみてほしい。

 

人には様々な面があり、一面のみでその人自身のことを語り切ることはできない。そんなことを改めて確認させていただきました。寛容な世界観の中で繰り広げられる色々な演目、聴けば聴くほど奥が深いですね!

 

■12月8日

1エピソード、20分。そのちょうどいい長さのドラマを観るのが、私のここ数年の寝る前のルーティンだ。コメディドラマ特有の観客の笑い声とテンポ良く進む展開を流し見していると、心地よい眠りに吸い込まれていく…。

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📺「friends」(1993-2003)

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NYを舞台に、男女6人の20代後半から30代前半までの10年間の生活を描いたドラマだ。1990年代のファッションやそれぞれ個性豊かなキャラクターがツボ。1シーズンにつき20数話で、10シーズンの長きに渡り構成されているが、もう空でセリフを言えるほど観ている。

私がフレンズで1番好きな要素は、登場人物達の毎日が「リアル」である点だ。キャリア、結婚、子育て、恋愛、家族関係の問題など、毎日を彩る、決して幸福なものだけではないあれこれがきちんと描かれている。

テーマソングは、”So no one told you life was gonna be this way.” という歌詞から始まる。この歌詞通り、「リアル」な人生は予想外の連続だし、うまくいかないことも沢山ある。一日の終わりに『フレンズ』の世界にほんのすこし浸ることで、私はどんな日も「”幸福な”リアル」として締めくくることができるのだ。

 

▷お話はフィクションでも、受け取る感情は現実のものなんですよね。エンタメでリアルを描くことで、視聴者自身のリアルにも影響を与える体験ってなかなか得難い、貴重なものだと思います。それを可能にする作品も、受け取る書き手様の感性も素晴らしいなと思いました!

 

■12月16日

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