AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

編集・ライター
中村 斐翠

真っすぐな人のきらきらした目が好きです。 正しいときに、正しい重さの言葉を選べるようになりたい。

2022.04.29

緩やかに交わり、柔らかにつながってゆくいちにち。:浜名湖、旅するパーク。

会えて report

鰻が好きで、どれほど好きかと言われれば最後の晩餐にしたいくらい。
そんな私にとって、「浜名湖の鰻と引き換えに…」との誘いはあまりに魅力的で、詳しい内容も聞かずに二つ返事で承諾した。

だから、「浜名湖、旅するパーク」に参加するということになったけれど、その目的はたぶん誰よりも邪だった。

■旅するパークがはじまる。

今回参加した「浜名湖、旅するパーク」は、静岡県・東急ハーヴェストクラブ浜名湖の芝生広場にて、製作体験やアクティビティを通しみんなで遊び場を作り上げてゆくといったイベント。

「運営スタッフ」との肩書きを与えられパークに参加することになった私は、(頭の中は鰻ばかりなので)その響きにむず痒くなりながら準備に参加した。

前日の台風の影響か、朝から風がとても強く、机上に置かれた紙のパンフレットは並べるそばから無抵抗に飛ばされてゆく。けれど会場準備が進むにつれてに風はだんだんと弱まり、つられるようにスタッフさんたちの間にも笑顔が広がってきた。

他方で私は素直に笑顔になれずにいたのだが、それは私が子どもを前にするとどう接していいかわからずどぎまぎしてしまうタイプの緩やかな子ども嫌いだからで、これから始まるパークに子どもがたくさん集まるだろうことを思いひとり不安を募らせていたからである。

そして集合時間の13時、さまざまな表情を抱え参加者の方が集まってきた。

溢れるわくわくに突き動かされるよう会場に駆け寄ってくる子どもに、それを慌てて追いかけるお父さん。辺りを見渡し心細げなおひとりさま。穏やかに微笑みながら孫の手を引くおばあちゃん。

「いったいここでは何ができるんですか?」
と、赤ちゃんを抱えたお母さんに話しかけられる。
それもそのはず、旅するパークのサイトはイラストばかりで、説明がほとんどないんだもの。

スタッフとしてはきちんと答えなくてはいけないのだろうけど、実は私もよくわかっていないのでぼやかしにぼやかして返答する。

おそらく誰もがよくわかっていないまま、初対面どうしのぎこちない距離感で集合写真を撮り、パークは始まった。

■流木を拾い、ヤドカリに救われ、

旅するパークには、絵本、お絵かき、三ヶ日、木工、ミシン、染め物の6つのエリアがあり、参加者は自由に行き来しエリアに参加できるという。場内にはフラッグやぽんぽんで飾られたテントが建っていて、それぞれのテントの中で体験が繰り広げられるらしい。

自由に、というのが私にとってはまた不安要素で、開始早々どうしていいかわからなくなる。
とりあえず何か枠組みが欲しくて、浜名湖に流木を拾いにいくチームに参加することにした。

ホテルを抜けてぞろぞろと浜名湖へと向かう。

無邪気に駆け出す子どもたちを前にまごつく私は、仕方なしにスタッフ然として後方を歩き、子どもたちが流木集めに興じる様子を一歩引いて眺めていた。

我先にと流木を集める子どもたち。Colemanのワゴンに詰め込まれ、あっという間にいっぱいになる。

とはいえいつまでも突っ立っているわけにはいかないので、流木には目もくれず一心に湖の中を覗き込む少年を見つけ、恐る恐る話しかけてみた。
その視線の先にはヤドカリがいて、私は生きたヤドカリを見たのが初めてなものだから、どぎまぎもびくびくも忘れ一緒に興奮する。

ヤドカリに助けられ、なんとか友達が1人できたとほっと胸を撫で下ろした。


収まりきらなかった戦利品を抱え、浜名湖をバックに記念写真を撮影。

■予定外の雨により交流は深まって。

流木を抱え会場に戻ってくる。唯一の友達になった少年はどこかへと消えてしまい、1人手持ち無沙汰に会場をふらふら。

拾った流木や集めた木材を使い工作をする木工エリアに、名産のみかんやホテルから出るコーヒーかすでハンカチを染める染め物エリア、ブラザーのミシンとColemanのテント素材で巾着を作るミシンエリア。

いくつかのテントを覗き歩いて、ものづくりに興じる人々の賑やかさにやや気疲れしてしまった私は、閑やかな雰囲気のテントにお邪魔することにした。

そのテントは絵本エリアで、参加者の皆さんから持ち寄り集められた絵本たちと、柔らかな毛布、クッションが置かれ、くつろぎの空間が用意されている。

絵本を介してであればたとえ子どもでも話しかけられるような気がして、勢いづいた私は絵本を眺める女の子に近寄る。
私の不安をよそに満面の笑みで私を受け入れてくれたその子は、新しく絵本を選び持ってきて一緒に読もうと誘ってくれた。それが私の大好きな絵本だったものだから、なんだかくすぐったいような嬉しいような気持ちになり、一緒になって読んでいるうちに不安やら緊張やらはいつのまにか心地よさに変わっていた。


読み聞かせをしたり、寝転がったり。思い思いの時間、空間。

友達のお家に来たような感覚でしばらくくつろいでいると急に空気が湿りだし、ぽつぽつと雨が降り始めた。それは瞬く間に大粒の雨となり、外で活動している人たちは慌てて近くにあるテントに逃げ込んでゆく。絵本テントもすぐに満員になった。

小さなハプニングを共にすると妙に仲間意識が芽生えるものだと思う。雨で生まれたその仲間意識からなぜか私は饒舌になり、絵本テントに逃げてきた人々と言葉を交わす。そのうちなんだか可笑しくなってきてほくほくと笑いあっているうち、私をずっとどぎまぎさせていた小さなつかえがふっと取り除かれたような感覚になった。

■そして始まった鬼ごっこ。

雨はほどなくして止み、テントから出てきた人たちでパークはまた賑わいはじめる。
絵本エリアで仲良くなった少女に手を引かれ、私はお絵かきエリアへと向かった。

そこには手作りの黒板が置かれ、既にいくつかの絵やかたちで彩られていた。少女と一緒に、手をチョークの粉で真っ白にしながら、絵しりとりやらお絵描きバトルに熱中する。
いつのまにか子どもたちが集まっていて、誰からともなく自然と鬼ごっこをやる流れになった。鬼役を免れた私は一目散にその場を逃げ出し、童心に帰り会場内を全速力で駆け回る。

こおりおにで始まった鬼ごっこがかわりおにになり、息が上がって疲れ果てた頃には、いつのまにか辺りは薄暗くなっていて、会場には椅子が並び、焚き火の準備がなされていた。

■焚火を囲み、マシュマロを頬張る。

各々椅子に座り、または地面にしゃがみ込み、焚き木の山を囲う。cammocのスタッフさんにより焚き火に火がつけられると、わぁっと歓声が上がった。

そういえば、本物の炎を見るのって久しぶりで、その動きが案外面白くしばし見入ってしまう。

参加者の方たちと並び炎に手をかざしていると、ぽつりぽつりと始まった会話はだんだん大きくなり、鬼ごっこの心地よい疲労感も相まってなんだか満ち足りた気持ちになってきた。その時お腹がぐ〜っと鳴って、そういえば何も食べていなかったことに気づく。

場内のキッチンカーでマシュマロが買えるらしいと聞き、早速手に入れ焚き火で炙ってみる。先ほど鬼ごっこをしていた子たちと一緒になってマシュマロをはふはふと食べていると、小さな頃よくこうやって友達と焚き火を囲んでマシュマロを頬張っていたなぁと思い出し、ふっとくすぐったいような心地になった。

■旅するパークの一日が終わる。

いつのまにか真っ暗になり、場内はランタンと焚き火でほんのりと照らされていた。
焚き火と人々の笑い声に囲まれた空間に身を委ねていると、なんだか気が緩んできて、ほぉ〜っとなって辺りを見渡してみる。
すると最初会場に漂っていたぎこちなさや緊張感はいつのまにか跡形もなく消え、代わりに温かく安らかな空気で満たされていることに気がついた。

あ、いいな、今とても。
オルゴール箱にしまい込み、時々そっと取り出して大切に大切に浸りたい。そんな光景だ。

私は鰻のために浜名湖に来て、パークに参加した。
だけど、この光景を、人々が柔らかにつながりあっていく様子を眺めていると、たとえ鰻なしであっても私はきっと参加していただろうなと、そう思った。

「浜名湖、旅するパーク」のストーリー(体験)はこちらから 「浜名湖、旅するパーク」

文:中村斐翠

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