アエナクテモ、フォートウエノさんへ思いを届ける。
わたしたちは
お店やお店の人がいてくれたお陰で生まれた思い出を集め、いっぱいの思い出でお店を元気付けたい。
という想いから、東京メトロさんとともに、街を彩り私たちの暮らしを豊かにして下さっているお店を応援する「アエナクテモキャンペーン」を開始しました。
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今回は、キャンペーンに応募いただいた、カメラマンの足達なおさんの思い出をお届けするため、渋谷の写真店フォートウエノさんに伺いました。フォートウエノさんの物語と共にお送りします。
フォートウエノさんは、恵比寿、代官山から歩いて10分の場所にお店を構える写真屋さん。「アナログプリント」が有名で、創業から50年経った今でもアマチュアからプロまで、カメラを愛するお客様から愛される名店です。
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■人と人の繋がりを作る写真屋さん
-はじめまして。私写真がとても好きなので、今回はとても楽しみにしていました。
よろしくお願いします。
それは、ご縁がありそうですね。よろしくお願いします!
■アナログプリントの温かみを守るために
-フォートウエノ誕生のきっかけを教えてください。
元々サラリーマンだった父が、趣味だった写真を仕事にしたいと作ったのがこの店でした。
会社で働く側、写真の専門学校にも通いながらなんとかオープンに辿り着きました。
-お父様はどういう思いでお店を始められたのでしょう。
「好きなことを仕事にしたい」「自分にしかできない何かを始めたい!」という思いがきっかけだったのだと思います。僕もその思いを大切にしています。
-オープン当時はどのようなお店だったのでしょうか?
オープンした50年前は、フィルムカメラが主流で、いまの写真屋とは形が違っていました。
僕らの店のような小さい規模の写真店は、大きな現像機を持てるような環境ではなく、お客様と現像所を媒介する仕事を担っていました。お客様のフィルムをお預かりして、現像工場に送り、出来上がったものをお客様に受け渡すという仕事が主になっていたようです。なので、いわゆる写真マニアのお客様が多かったのです。
-そうだったんですね。フォートウエノさんが歩んできたこの50年の間に、カメラをとりまく環境が大きく変わったと思うのですが、時代の変化とともに何か変わったことはありましたか?
デジタルカメラが主流になった頃、僕たちもデジタル機を入れないとお店として営業できないという状況に至ったこともあります。しかし、私たちはどうしてもフィルムの良さがやめられず、デジタルもアナログも両方大切にする店でありたいと思い現在でもアナログ機を使っています。
-それはなぜですか?
撮る人の個性がはっきりと出るフィルム写真こそ、写真の醍醐味だと思っていて、そんな写真が生まれる場所としてあり続けたいと思ったのです。
写真って、映画とか音楽とは違ってメジャーな表現方法ではなく、
人それぞれ切り取る目線が違うことで、自分しか分からない魅力が込められていると僕は思います。
-足達さんの投稿には、アナログプリントの良さが書かれていましたね。
フィルムのあたたかみを素直に表現してくれるもの、これがアナログプリント。使い方によって分けるべきですが、ポートレイトの丸みとかはアナログプリントのほうが出やすく、評価をいただいています。
-今までのお客さんとのエピソードで、嬉しかった出来事はありましたか?
まだSNSがまだなかった頃に、口コミを聞いたのか、地方からうちに現像を頼みたいとフィルムを送ってくださった方がいたことです。今や口コミは当たり前の時代になりましたが、当時は稀だったのでとても嬉しかったですね。アナログプリントを通して、全国のいろんな方々と繋がれることにワクワクしました。今のSNSで繋がることとはまた違った嬉しさです。
■︎写真を撮った人と、二人三脚の写真屋さん
-現在はどんなお客様がいらっしゃっているのですか?
20代、30代前半の若いプロカメラマンの方が多いですね。
お二人のような、初めて持ったカメラがデジカメの「デジカメ世代」だと、細かい部分まで綺麗に映るのが当たり前になってきていると思います。
でも、アナログプリントは綺麗に映りすぎない。おまけに時間も手間もかかる。
その便利すぎない部分に面白さを感じ、魅力的に思う方も多くなっているのではないでしょうか。
-ここ最近はコロナウイルスによるステイホームが余儀なくされていましたが、この期間で写真における変化は何かあったのでしょうか?
恐らく、ステイホームで自分の時間が増えたはずです。なので、写真を撮っている人たちは、自分はどういう写真を撮るのかということに向き合う時間になったと思うんです。
それによって、写真の流行りが変わるのではないかなと思っています。
より私的な写真になれば、写真が個性豊かになって面白いものになるのではないかと思うのです。自分と向き合う時間が多いほど、より個性的な写真が生まれるのではないでしょうか。
-フォートウエノはこれからどんな存在でありたいですか?
50年変わらずに歩み続けて来たこの店を繋いでいきたい、そしてアナログプリントの技術を残したい。そう思っています。
「写真屋さん」が減ってしまった今、この技術の良さを珍しがってくれる方も増えています。
また、僕は街の中だけで止まらない、全国の写真好きが繋がれる場所でありたいと思っています。
地元の方がここで会って挨拶するというのももちろん素晴らしいことですが、日本全国から来てくれているお客様がここで出会って、何か新しいことが始まれば素敵だなと考えています。
-足達さんの思い出から、その人の一生に寄り添うような写真屋さんなのだなという印象を受けました。
足達さんが来てくれるから、そういう存在になるんですよね。
人と人がこの場所を通して、また写真を通して繋がってくれたらいいなと思っています。
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■足達さんへのお返事
あしだちさん、お元気でしょうか?
アエテナクテモキャンペーンで、フォートウエノの事を書いてくださり、ありがとうございました。
こちらは、毎日、有り難いことに、写真が好きなお客様にご来店くださり、バタバタとお客様にはご迷惑をおかけしてしまったりしていますが、それでもなんとか写真に携わる生活をすごさせていただいております。
いろいろな人がいらっしゃって、いろいろと変わりゆくご時世で、変わっていく事、変わってほしくない事、変わってはいけない事を、自分なりに考えるようになりました。
本当に変わってはいけない、人に対する気持ち、それぞれの感受性、個性のあり方を、あしだちさんのInstagramやzineで再確認させさていただいています。
今はまだあしだちさんが日本にお帰りになれないのはとても残念ですが、
お帰りになった際には、あしだちさん持ち前のパワフルな行動力と幅広い人脈で、いろいろな人を巻き込んで、また一緒に写真展をやりたいですね。
それでは、また笑顔でお会い出来る日を楽しみに、「毎日写真フェス」精神で今日も元気に開店したいと思います。
フォートウエノ 上野より
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上野さんとは初めてお話したにも関わらず、お互いの共通点について話すことができ(知り合いの写真家さんがいたのです)、前から知っているような、そんな印象を受けました。
フォートウエノという場が、人と人の繋がりをつくる場所になれば。という思いを持たれている上野さん。そんな思いが滲み出るような場所だったと思います。
写真という表現方法は究極に自分に向き合うものであり、ごく個人的なものだと思っています。しかし今回上野さんとお話しし、自分に向き合い続けるとともに、わたしは他者と繋がる上でも「写真」という表現方法に魅力を覚えたのです。解釈を共有するだけでなく、時間までも共有できるという、写真が持つ、人と人が写真によって繋がる力を感じることができました。さらに、「フォートウエノ」という場がその人との繋がりを広げているのです。まるで撮った人の考えや心を映し出したような写真がここフォートウエノで現像され、上野さんを始めとした多くの人と繋がりを持つ。それは勇気のいることですが。今回の取材を通して写真の持つ力をここでさらに実感できたような気がします。私の写真意欲も湧きました!プライベートで、またお伺いさせていただきたいです。