AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

2021.11.04

アエテ interview

『タビマチ』は、
どこかに活動拠点を持ち”旅やまちを彩る”お仕事をされている方々へ
歩んできた物語やまち・ひとへの想いを伺うインタビュー連載です。
彼らの物語や想いに触れ「会いたい!話してみたい!」と思ったら
次はあなたが素敵な人々がいる、あのまち、あの場所へ、旅をしてみて下さい。

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レザークラフト教室・Qrinafの須川”バンディ”豊澄さんにご紹介いただき、今度は浅草・観音裏にあるビストロ・Mrs.Dangerを訪れた。店主の中村健太さんは、ここ観音裏で生まれ育った。2019年にハンバーグと自然派ワインの店を奥様と二人でオープンしたそうだ。
浅草に縁が深い中村さんに、浅草の魅力や大切にされている想いなどを伺ってきた。

■DJを辞め、修行に励んだ7年間。

まずはバンディさんとの繋がりを教えてください。

―オープンして1.2ヶ月くらいの頃、お客様としてご来店いただいたことが始まりです。そのあとも何度か来店していただいて、仲良くなりました。
オープンした年の年末には、バンディさんの教室の忘年会にも利用していただいたんです。

2019年に、浅草・観音裏にて「Mrs.Danger」をオープンされていますね。それまでの経緯を教えていただきたいです。

―20代のころは、就職もせずにDJをずっとやっていました。
でも30歳を迎え、DJでは食べていけないと思うようになったんです。母親のやっている飲食店を継ごうと思ったけれど、簡単に継がせてはくれず「最低でも3年は他の店で修行してこい」と言われました。そこで、会社経営の飲食店に入社し7年ほど修行したのち、独立しました。

はじめからお店を開こうと考えていたわけではないのですね。修行をして良かったなという思いはありますか?

―あります。泥臭い努力をする経験を積めた、というのが何よりも大きいですね。
入社当初は社会のルールもよくわかっていなかったから、バイトの高校生の子にもよく怒られていました。もちろんすごく悔しかったけれど、そこで辞めてしまうとどこでも働けなくなってしまうのはわかっていたので、とにかくいろいろ教えてもらっていました。

それってすごいことですよね。私だったら、年下の子に何か言われたら素直に受け入れられずに反発してしまう気がします。

―普通はそうだと思います。でも、僕にとってはこれが最後のチャンスでとにかく必死だったから、年なんてどうでもよかったんです。社会人1年生として、何言われても我慢して何言われてもやってやろう、そしていつか見返してやろうと思っていました。


7年間と、結構長い期間修行されていますよね。

―焼肉屋、ビストロと2つの業態で働き、新店の立ち上げも経験しました。
僕は商売人の家系だったこともあり、店を継ぐにしても独立するにしても経営側に回ろうという思いがありました。修行中にその大変さを知れたこと、基礎・基本を身につけられたことも良かったと思っています。
母親の店を継ぐために始めた修行ですが、やっていく中で、店を継がずに自力でやりたいという思いが芽生えてきました。

そこで独立を決めたんですね。

■たまたま選んだのは、深く繋がる浅草・観音裏。

お店を始めるまでに大変なことはありましたか。

―物件探しです。
とにかく決まらずに、理想の物件に出会うまで1年近く探し続けました。

物件選びに強いこだわりがあったんでしょうか?

―広いところが良かったんです。
「お金を稼ぐ」というのが軸にあったので、広さは絶対に重要でした。いろいろなエリアを見たけれどなかなかいい物件が見つからず、結局生まれ育った浅草の観音裏に落ち着きました。
この物件、もとは靴の倉庫だったんです。それを全部取り壊し、友人の手も借りて改装を進めました。

ブルーがすごく印象的な内装ですよね。

―デニムが好きなので、紺色にしたかったんです。修行中からいつか独立したいと思っていたので、内装のイメージは常に頭の片隅にありました。


浅草に来たのは、たまたまという要素が強かったんですね。

―そうですね。浅草に対する強いこだわりやねらいは特にありませんでした。
オープンしてから、ファミリー層が多かったり、周囲にいい店がたくさんあったりと、このエリアが意外と栄えていることに気づいたんです。
ありがたいことに、オープンからお客さまもたくさんいらっしゃって、うまい風に転んだので、結果良かったなと思います。

ファミリー層が多いと、どのような点で良いところがありましたか?

―口コミで情報が広がる点ですね。
お客さんからお客さんへと次々に情報が伝わるんです。この点は、修行中に働いていた都心部の店とは正反対だと感じています。都心部だとSNSを見て来店する一回きりのお客さんが多いんです。それに比べて、こちらは家族ぐるみで何度もリピートしていただくというようなお客さんが多いですね。より密な繋がりがあるように感じます。お客さんの7~8割がリピーターさんで、週1~2回の頻度でいらっしゃる方も多いです。

常連さんがきてくれるのはやっぱり嬉しいですか?

―嬉しいですね。それに、お互いがわかっているから楽なんです。先ほどの密な繋がりに通ずる部分があるけれど、常連さん同士が友達、ということもよくあります。
常連さんに支えられているし、これまでもこれからも常連さんを大事にしてきたいです。

広く浅くというよりも、狭く深い付き合いを続けたいという感じなんですね。


対面式のカウンターで、お客さんとの会話も生まれる。

■大切にしたいのは、人との繋がりとあたたかさ。

これからやっていきたいことはありますか?

―観音裏にパスタか、和食と自然派ワインの店をオープンしたいと思っています。でも、多店舗展開しようという気持ちはあまりないです。多くても3店舗くらいの規模感を保ちたいですね。
チェーン展開をすると、アルバイトが増えて自分たちの目が届かないところが多くなってしまうんです。そうすると、自ずと細やかさやあたたかさがなくなり、マニュアル化された接客になってしまいます。でもそれって僕たちがやりたいことではないんです。
チェーン店もそれはそれで良さがあるけど、何度もお客さんが来るのは唯一無二性がある個人店だと思います。やらされているではなくて、自分の意志でやっているからこそにじみ出るものがあって、それを大事にしていたいですね。

利益を出しビジネスとして回していくには、マニュアル化されたものももちろん必要だと思うんです。でも、小さな店や繋がりだからこそ生まれる温もりみたいなものもある。そういうものに人は惹かれるのかもしれないですね。

―美味しい店、便利な店、安い店はいくらでもあります。だったら僕が差をつけられるのは人との繋がりだと思ったんです。そういう意味でも、3店舗くらいの規模感を大事に、常に自分の目が届く状態を維持したいですね。

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