AETE あの人がいるから旅したくなる。アエテ

2021.02.16

アエテ interview

ミルクボーイ、ハナコ岡部、ラランド、令和ロマン―――。挙げだしたらキリがない程に、近年は学生お笑い出身のプロ芸人が人気を博している。「最近よくテレビで見るし面白いと思っている芸人が、実は学生時代から精力的に活動していた」となれば、「その頃から追いかけていたかった」と悔しくなるのがファン心理というものではないだろうか。今後更に注目度が上がっていくだろう学生お笑いについてもっと知りたい、来たる「推し芸人」との出会いに備えて。そんな思いから、今回は現役の学生芸人であり、お笑いサークル連盟長として大会運営にも携わっている谷川さんにお話を伺った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

まずは自己紹介をお願いします。

―谷川なつです。学生芸人としては3年目で、2020年度のお笑いサークル連盟長を務めさせて頂きました。

 

今回の記事にあたってまずお伺いしたかったのが、学生お笑いとプロのお笑いを区別してしまってよいのかということです。双方の間に明確な違いはあるのでしょうか?

―お笑いという大きな括りの中で「学生芸人」という1つのジャンルがあるのかな、という感覚はあります。違いとしては本業ではないこと、コンビとして組む人間を固定しないこと、サークル活動の一環としてやっている人とプロ志望の人が混在していること、等が挙げられます。が、基本的にはプロ芸人の世界を濃縮して、小さい規模で再現している界隈という認識です。

 

成程。学生主体なので規制が緩い上に規模が小さい分、芸人としての個性がより色濃く出てくるといったことでしょうか。

―そうですね。仕事としてのお笑いでは結果を出さなきゃいけないけれど、そういったプレッシャーはないので、自分の好きなお笑いをやることの自由が担保されている環境ではあると思います。アングラ系のネタも多いですし。

 

 

気になりますね。では、そういった学生お笑いの世界と谷川さんはどう向き合ってきたのかを教えて下さい。まずはお笑いを始めたきっかけからお願いします。

―大学のお笑いサークルに入部したのは、単に雰囲気がよかったからなんですけど…1年の夏に初めて学外の大会に出たのも、団体戦に出るための数合わせみたいな。

入部してすぐ、という感じですね。

―部内に演者が少ないのに加えて、当日急に来られなくなった人もいて、その人の穴も埋めるために急いでネタを作って、台本を読みながら本番をやる、みたいな。思い出すと初めてのライブは本当に散々でした(笑)

でもこの経験だったり、同時期に参加した株式会社スラッシュパイル(※興行企画制作会社)のオーディションだったりを通して、「観客を笑わせたい」「もっとうまくなりたい、演者として成長したい」という意欲が芽生え始めました。そこからは積極的に学外のライブにも参加しています。

 

 

「サークルを楽しむ」から「賞を取りたい」へと、ご自身の心境が変化したのが印象的ですが、その原動力は何だったんでしょうか。

―「ネタがウケたと分かったときの瞬間」の感情が忘れられないというのが1番大きいと思います。観客の笑い声がどっと押し寄せてきた時の快感はやっぱりうれしくて、それを求めて活動を続けているんだと思います。

活動の中で、特に忘れられない「瞬間」をお伺いしたいです。

―1年の頃、コンビネタが予想以上に評価されて、NOROSHIっていう大会に出場できたことがあって。極度の緊張状態だったんですけど、出囃子が鳴って、相方と「いくぞ!」って気合を入れて、ネタをやり切って。その瞬間に会場がドッと沸いたんですよ。その前の大会では観客の得票率0%だったわたしたちが、こんな大舞台でウケたことが信じられなかったし、嬉しかった。

あと学内で初めて1位を取って、憧れていた先輩に勝てたときもびっくりするくらい嬉しかったです。観に来てましたよね。

観てました。その時のネタは何でしたっけ。

―ヤンキーが和歌俳句部に入るというネタですね。

キャッチーですね(笑)

では、今まで精力的に活動されてきたからこそわかる「学生芸人の魅力」について教えて下さい。

―やはり自由度の高い環境なので、各々が好きなお笑いを突き詰めているところです。お笑いを仕事にすると売れ線を無視したり自分の面白さを貫くということはやはり難しいと思うんですけど、学生お笑いはその前段階にあたるので、多様な人間がそのまま生きています。それはつまり多様な選択肢が観客側には提示されていることなのかなと。まあやっぱり明確な大会成績等がないと人の目に触れやすい場所には出にくいですけど、「私にとってはおもしろい」という笑いを見つけることが出来る可能性もありますね。

実際にそういう経験はありますか?

―印象深いのは、「♪廃品回収車です」っていう音声のレコーディング現場のネタをしていた人。

この一文だけで大分面白いですね。

―面白かったんですけどね。私のイチ押しです。

お話を伺っていると、自分の信じる面白さが重要視されている側面が学生お笑いではより際立っていて、ジャンル独自の魅力にも繋がっているのかと思います。

―数年やってきて、「エゴが強いほど面白い」というのをひしひし感じています。3分間ステージで人を笑わせるっていうのはやはり物凄くプレッシャーを感じることなんですけど、その中で立っていられる原動力は自分のネタへの愛であり、ネタを魅せるぞ!という気概なんだろうなと、仲間芸人を見ていても思います。

 

そんな学生お笑いの世界、踏み込むには何となく敷居が高い心地がするのですが、初心者でも学生芸人に出会いに行ける機会はあるんでしょうか。

―あります!是非ライブに来て欲しいです。

お笑いサークル団体戦である「NOROSHI」や漫才組のナンバーワンを決める「大学生M-1グランプリ」はプロの芸人がMCを務めているし、上位の学生芸人はプロ並みに面白いし、その割にチケットが安い!のでおすすめです。また、新宿・中野近辺で開催される「レジスタリーグ」「ガクコメ!」も足を踏み入れやすいライブです。

あとはYoutubeでネタ動画を観るのも良いかと思います。NOROSHIの歴代映像は全てYouTubeに投稿されていますし、最近は各お笑いサークルでオンライン配信が行われていることもあります。もしそこで気に入った演者がいたら、その人自体や所属するサークルのSNSを追ってみるのも一興です。

出会う機会がたくさんありますね!直近の大会予定はあるんでしょうか。

―2021年3月17日(※)にNOROSHI 2021の決勝があります。全国で1番面白いお笑いサークルを決める大会なので、めちゃくちゃ熱いです。ご来場をお待ちしております!

※本イベントは中止になりました。インタビューは2020年12月に行ったものです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

生活を気にせずに自分のやりたいことが出来る。(勿論一概には言えませんが、)それが叶うのが学生という立場だと思います。その時間にできる様々な事柄の中で「笑いを追求すること」を選び、且つ自ら勝負の場に挑む「学生芸人」という存在をとても眩しく思うし、心から応援したいです。推しとの時間は限られている、できるだけ早く出会っていたい。そんな方は是非、学生芸人のライブを覗いてみて下さい。

加藤 和希

前の記事前の記事 BACK TO 敢えて 次の記事次の記事

アスエ event