『タビマチ』は、
どこかに活動拠点を持ち”旅やまちを彩る”お仕事をされている方々へ
歩んできた物語やまち・ひとへの想いを伺うインタビュー連載です。
彼らの物語や想いに触れ「会いたい!話してみたい!」と思ったら
次はあなたが素敵な人々がいる、あのまち、あの場所へ、旅をしてみて下さい。
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バンディさんのお話を伺っていると、「今が最高」というワードが何度も出てくる。少なくとも、二十歳の私にとって、そんなふうに堂々と言える大人の存在はすごいことで。「最高の形」を実現している人生の先輩に、私たちへのアドバイスを伺ってみたいという気持ちになった。
■次にやりたいこと。チャレンジしてみること。
まずは、バンディさんご自身の、次の夢を伺いたいです。
―現時点で私の夢は叶っているから、次の夢は、奥さんと一緒に、教室と和菓子カフェをやること。奥さんは和菓子を作るのが好きなんです。
もうイメージは湧いているので、必ず実現できると思います。あとは物件だけだけど、いい物件を手繰り寄せる自信はあります。縁を引き寄せる力を持っていると思うので(笑)
次の夢もまた、明確に描かれている。楽しそうです。
―人生一度きりだし、仮に失敗したって、やれるときにやるチャンスを活かした方がいいと思うんです。何が起こるか分からない時代ですし。
私のアルバイト先の店長もよく言っています。「若いうちはネタ作りだと思ってどんどん失敗すればいいんだ」って。
―本当にそうです。
私も、色々な仕事をしてきたけれど、全部今の店で役立っています。鉄道の仕事をやっていたから電気を自分で通せたし、インテリアショップもやっていたから内装も全部自分でできました。接客の経験はコミュニケーション力にもなっている。魚屋は、今はちょっとわからないけど(笑)
色々なことをやってきたのが、今の集大成になっていると思います。
無駄なことなど一つもない、ということですね。
―20代30代で何をやっていたか分からなくても、いつかまとまる時が必ず来ます。
だから、好きなこと、興味を持ったことは絶対やった方がいいです。色々なことに手をつけておいた方がいい。それで向いてないならやめればいいんです。
私も、チャレンジしていく中で、しんどいことは色々ありました。でも、「1年後には笑い話にしてやる」というマインドでやって来れました。当時は必死だったけれど、今思い返せば笑って話せるし、今が最高って自信を持てるんです。
今が最高、と言えること。それってすごいことだと思います。
―今が1番楽しくて幸せ。それだけは自信をもって言えます。奥さんとやるお店も楽しみです。一緒にお店をやったら絶対楽しいに決まっています。
■好きなことをやりたい人に、絶対に伝えたい想い。
奥様とのお店、素敵です。仮に利益がなくても、楽しければ最高ですね。
―利益はないとダメです。
趣味で作って食べてもらって嬉しい、ならいい。けれど、奉仕活動ではないから、利益は必要です。利益がなければモチベーションも上がらないし続けていけない。利益を取るっていうのは、綺麗事でなく、絶対大切なことなんです。
「商売云々より、やりたいことで人を幸せに」というのは違うと思います。生きていくためには、絶対に利益を取らなくてはいけない。ものづくりをしていくことは、お金をもらうことに罪悪感を抱き続ける戦いなんです。そして、ここは完全に冷静になって考えないとダメ。自分の表現したものに対し、最大限の利益をつけて、利益を得る。こうして初めて成立するので、そこから逃げてはいけないんです。
私は理想論で語ってしまうから、そういうところの考えがまだ幼いというか、甘いのかなと思います。
―利益を出すことが1番の目的になったら違うけれど、好きで続けて、自分を大切にした場合、どうしたってお金が必要になるんです。
もし、今好きなこと、やりたいことがあるなら、それはすごく幸せなこと。だから続けて欲しいです。そしていつか、やりたいことを形にするチャンスが来た時、お金があるとないとでは、身軽さの点で全く違ってきます。10年お店をやった先輩として、それだけは伝えておきたいと思います。
■やりたいことがない人に。動いてみて欲しい。
逆に今、やりたいことが分からず、なんとなく生きている人もたくさんいますよね。
―なんのために働くとか、今は考えなくてもいいと思います。ただ思いつくことをやってみたらいい。行動した先に何かひとつでも絵が浮かんだらいいじゃないですか。あれこれ考えると動けなくなってしまうから、動いてみることの方が大事です。動いて何もなかったら何もないことがわかっただけだし。10個動いてみたら、1個ぐらいなにか惹かれるものが出てくると思うんです。その芽を大切に育てていったらいいんじゃないかな、と思います。
バンディさんの見つけ出した最高の形。夢の詰まったアトリエ。
■周りではなく自分を見ること。自分の幸せを大事にすること。
―周りはあまり見ない方がいいです。今、SNSの全盛期だから、きらきらした情報ばかり入ってきますよね。人と比べて自分がどうか、と考えてしまう。それに惑わされない方がいい。自分を信じて突き進む方がいいんです。
SNS時代って、利点ももちろんあるけれど、評価軸がどうしても相対的になってしまう。不自由な感じがしますよね。
―そうです。ただ、時代的にはもう切り離せないもの。そういうものだと自分の中で割り切ることが必要なんです。周りは周り、自分は自分。比べることって本当に意味がないんです。
人を幸せにする云々の前に、自分が幸せじゃないと人を幸せにできない。だからまずは、自分が輝いていないといけないと思います。
憧れるライフスタイルっていくらでもあるじゃないですか。それをいいなと思っても、いざ自分が手に入れて幸せになれるかと言ったら、違いますもんね。
―絶対違います。それはその人の幸せ。自分の幸せは自分で見つけなくてはならないし、そのためには泥臭いこともやる必要があるんです。そして自分なりに輝ける環境を作れれば、過程も含めてそれが1番幸せだと思います。
相対的によく見られる努力をするのではなく、自分にとっての価値や幸せを見つける努力をしたいと思いました。
―それしかないですよ。それ以外は二の次です。それを追求し続けた方が楽しいじゃないですか。
■選択の積み重ね。人生において意識して欲しいこと。
―死ぬときの後悔をなるべく減らす生き方をしたほうがいいです。やった後悔よりやらない後悔の方が絶対年々大きくなるから。やって失敗したことなんて覚えていないけれど、やらなかったことはずっと悔やみ続けることになります。ターニングポイント、決断しなくてはならないタイミングは絶対何度かくるけれど、そのときの判断軸は死ぬ間際に後悔しないか、ということにすればいいと思います。
その小さな判断、選択の組み合わせが、10年後大きな変化になるんです。
将来について考え始め、不安定な時期を過ごす私にとって、バンディさんの言葉は響きすぎるもので。
読むでも、見るでもない。直接生身のお話を聞けるというのは、本当に貴重で学びとなる機会で、それができることに心底喜びを感じた。
気を張って生きていても、まぶしい情報ばかりが入ってくることが当たり前の毎日に、無意識でも疲労は溜まるもの。私は、溜まり溜まったものが一気に爆発し、人より劣った自分に対する嫌悪感に苛まれるばかりだった。
今回のお話で一つ分かったのは、そこに割り切りが必要だということ。「自分の幸せを大事に」、「自分の価値観で生きよう」、というのは、人と関わって生きていかなくてはならない私たちにとって、理想論かもしれない。けれど、比較し比較されることは仕方のないことと捉え、「ほかの人がどう思おうと、私はこれがいい」と、自分の中での指針を持つことは、心の安らかさを守るために絶対に必要なことだと考えた。
インタビューの帰り道、今回バンディさんを紹介してくれたLONAの青木さんが、自転車で疾走しているのを見かけた。
バンディさんは、蔵前にある私のアルバイト先に、ちょうど1年前くらいにいらしていて、お話したことがあったのが分かった。
台東区は、こうやって縁と縁でつながっていく街なのかもしれない。縁というのは不思議で、だけど本当にあるもので。心の中がほかほかとしていくのを感じた。